タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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幼い頃に強姦された光希。それは神事の一環であった。
神事を恐れながらも、彼らしく静かに暮らしていた彼の元に、
一夏を過ごした友人が再び村を訪れ、助けようと孤軍奮闘する。
徐々に光希の中の意識が変わってゆくが……。


4.jpg

 蓋を開けたのは誰?
 陰(いん)の闇が溢れた。

 大きな葛篭(つづら)と小さな葛篭。
 どっちを選ぶ?

 開けたのはあなた。
 我は選ばない。
 「我は葛篭を守る者」

 『閉じた蓋はいずれ再び開けられる。
 何度でも。
 
  大切なのは。
  希望を持つ事、見出す事。
  守るべきものを間違っているよ……』

 悲しみと愛を瞳に浮かべて、
 蓋を開けてしまったその人はそう言った。

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目次詳細目次
あらすじ
◆はじめにこちらをお読みください◆


= このブログは長編自作小説『神泊村』を中心にしてます =



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温もり 2

「おっ。でかい車だな」
 一郎は駐車場に着くと嬉しそうに湯浅の車の周りを回った。手伝いに来た筈なのに私と湯浅を放って、宿泊所へと入っていく。
 私は車の事に詳しくないので、湯浅の車がどういった物であるのかは良く分らないのだが、簡単に言えば、タイヤが大きく、トランクの扉を開けると屋根になる、ワゴン車だ。
 待っても一郎が戻らないので、湯浅と私とでカメラ機材の入った重く大きな箱を雪の上に次々と降ろした。
 終わった頃に、バンッ、という爆発音のような音が、山よりの方から聞こえてきた。
 何だ?
 私と湯浅が交互に顔を見合わせた時に、一郎が走って戻ってきた。手にはDパックが提げられている。
「降ろし終わったか」
「荷物など持ってどうしたのだ?」
「こうしようと思って、な」
 どん、と胸を押され、倒れた。丁度トランクの中だったが、次いで足まで、ひょい、と持ち上げられて押し込まれた。慌てて起き上がったが、扉が閉められた。硝子窓を叩き、思わずノブを探したが、元よりトランクにノブはない。
 どっ、どういうつもりだっ。
 外では同じ様に湯浅が、何をっ?、と驚いた声を上げている。
 今し方降ろした荷物を載せる為に後部座席は畳まれた状態だったので、すぐにサイドドアの所迄移動した。初めて乗る車で、人工物を見る不得意さもあり、なかなかノブを見付けられないでると、外から湯浅の一層驚いた声が聞こえた。
「何をっ?返しなさいっ。君っ」

 がちゃ

 運転席のドアが開かた。
 湯浅かと思ったら、Dパックが放り込まれてきた。
「危ないぜっ。おっさんっ」
 慣れた風に一郎は運転席に乗り込んだ。すぐにエンジンが掛けられた。
 フロントガラスの前を、慌てふためいた湯浅が横切った。
「お前が何故、キーを持っているっ?」
「エンジンを止めなさいっ」
 助手席に湯浅が乗り込んできたが、ドアを閉め切らない内に発車され、すぐにブレーキが踏まれた。 振動により、後ろに倒れ、起き上がろうとすると今度は前に振られ、前席の背凭れに体をぶつけた。 湯浅も同じような有様だった。再び急発進し、駐車場を出た。
「き、機材が……」
 湯浅が悲痛な声を上げた。
「避ける様にハンドル切ったぜっ。ぶつかった感じなかったろっ」
「何を考えているんだっ」
 私と湯浅の抗議の声が重なった。
「免許を持っているのかっ?」
「ねぇよっ。んなモンっ」
 異口同音の質問に、一郎は豪快に笑って応えた。
 私と湯浅は、同じ様に唖然とした。
 車は、あっという間に村を出て、外の世界とを隔ててる杉林の道を走り出し、後方の家々は小さくなり、見えなくなった。


 | 目次 | 



やっと村を出ました……><。
別窓 | 第6章 雪催い→6 温もり | コメント:0 | トラックバック:0
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温もり 1

 社務所の着替えの間で再び着替えて、普段の服装に戻った。
 表の通用口が見える廊下まで来た時、裏から出れば良かったと後悔した。
 山根が上がり口の板の間に立っていた。
 咎められるのを覚悟した。社務所にぐずぐずと居た事もそうだが、手に持っている靴は隠しようもない。
 山根は、廊下上の私の方に体ごと振り向き、じっと動かず、明らかに私が来るのを待っていた。何を言われるかと緊張したが、靴に気付いた様子を見せたものの、何も言わなかった。
 土間に、湯浅が居た。
 挨拶が長引いたのか、案内した時と全く変わらない手荷物一つだけの姿だった。山根は余所者の手前、黙ったというところだろうか。そして土間には、一郎と喜右ヱ門もいた。
「喜右ヱ門と共に家に戻りなさい」
 皆で溜まって何をしているのか?一郎が何故この場に?訊きたかったが、有無を言わさない口調で追いたてられた。

 喜右ヱ門と一緒に社務所を出た。
 確実に戻るように伴を付けたのは分るが、山根の指示に喜右ヱ門は反対したばかりである。何故彼を?と疑問がわいた。それに予め喜右ヱ門があそこに居た理由も分らない。それを訊くと、喜右ヱ門は、雑用を放りだして私に会いに家に行ったがおらず、慌てて社務所に戻ったところ、通用口で彼らと遭遇し、話に加わっていたと言う。

「光希様……。済みませんの……。山根様を説得出来ませんでしたの……」
 そう言う彼の方が、私より余程参っている。いいよ、と出来るだけ笑顔で応えた。
 山根の指示は姥様の指示で、いくら斎家の者であっても覆るものではない。
 参道の中程まで来て私の家へと入る道の所で、私は足を止めた。
「喜右ヱ門。ここで少し、一郎を待っても良いだろうか?」

 ぎゅ、と手を握られた。
「逃げ……」
 喜右ヱ門の口からかすれ出てこようとする言葉に、私は驚いた。
最後までは紡がれず、手を通して伝わる震えが彼の中の葛藤をはっきりと伝えてきた。
「ここより他に当ては無いし、逃げてもどうにもならないよ」
 出来るだけ深刻にならないよう、笑顔で言った。
 喜右ヱ門は手を離し、触って済みませんの……と力無く謝った。
「始めはそんなつもりはなかったんですの。だけど、四人で話した晩、一郎に言われて自覚したでの。……いつの間にか我は、きっかけを探してたんだ……。しつこい、と思われた事もあったのではないですか?」
 確かにそう思う時もありはしたが、全てがそうではない。
 私は両手で喜右ヱ門の片手を握った。
「喜右ヱ門。幾ら私が不思議な光を見る目を持っていると言っても、それは、目の見える人より確かなものではない。実感がないのだ。触れてくる喜右ヱ門の手だけが、実感があった。確かに居る、という実感がね。両親と一緒に暮らしていた時は、互いに触れ、存在を確かめさせてくれていた。……これまで私が、不確かな世界に迷い込まず、自分を見失わずに生きてこれたのは、触れてくる喜右ヱ門の常の手があったからだ。……大きな手だ。感謝している」
 喜右ヱ門は涙を拭う様に腕を顔の前に上げた。
 人の温もりは安心だけでなく、己が確かにここに居るという事も教えてくれ、居場所も与えてくれる。 彼の手が無ければ、杉林の家で一人孤独に押し潰されて居たかも知れない。
 私は、強く握り返してから、ぽんぽんと軽く叩いて放した。

「どうしてあそこに一郎が居たのか知っているかい?」
「あ……、あの記者さんの手伝いをさせるようですの」
「取材の手伝い?一郎に?」
「これから社務所内の写真撮影をするようでして、機材の運び入れを手伝わせるようですの」
 まずまずの滑り出しを湯浅は得たようだ。
 だが恐らく、社務所止まりの取材になるだろう。
 神事の行われている神泊処や拝殿には入れて貰えずに終わる。幾度かこれまでに訪れた雑誌記者と同じ様に。
 やがて一郎と湯浅が、参道を下りてきた。

「光希も手伝いに来いよ」
「へ?」
 一郎の誘いに、私よりも喜右ヱ門の方が驚いたようで、声を出した。
「エモン。お前は来なくていいや。どうせ光希に重い物持たすなとか過保護になるだろ」
「でも我は光希様を送り届ける役目サあるで」
「あー、そうだな。ちゃんと送り出した事にしておけ。光希が居ないのがバレた時には、知らぬ存ぜ   ぬ、もしかしたら俺が無理矢理連れ出したかもって事にすりゃあ、良い」
 たまには境内の外に出た方が気分転換になるだろ、と一郎は私の腕を掴んで歩きだした。
 宿泊所に行ったからと言って、特別気分が変わる事は無いのだが。言いつけを破ってまで行く理由が分らない。
 手伝ってもらう当人の湯浅は、事態が飲み込めないようで、あたふたと後を付いてきている。
 当然ついてくると思った喜右ヱ門は、分れた場所から動かずに居て、こちらに向かって深くお辞儀をしていた。
 下から見上げるその小さな姿は、かつての両親の姿と重なって見えた。


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次回で6章は終わります~。
いや~、長かった……。

別窓 | 第6章 雪催い→6 温もり | コメント:0 | トラックバック:0
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『They Don't Care About Us』 『We Are The World』 『Where the Hell is Matt?』 『Stand By Me』

曲載せ記事第5弾です。
どれもYouTubeから気に入って拾ってきた曲です。
主に洋楽。
適当に、本当に適当な選曲ですので、
アーティストや曲の知識は無いので、
質問等はご遠慮願います。


曲は追記に載せてあります。
『They Don't Care About Us』 『We Are The World』 『Where the Hell is Matt?』 『Stand By Me』…の続きを読む
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痣(あざ) 3

「何か足についているのか?」
 冬季の行動が一郎の時と同じだった。
「……手の跡が……」
 痣になってついている、とその形に合わせるようにか、私の足首を軽く掴んできた。
 素早く抱え込む様に袴の中に隠した。
 お陰でいつ掴まれたのか、思い出した。一郎ではない。昨夜だ。痣が残る程に強く掴まれた実感はなかったが、それ程強く握られていた、という事が恐怖を抱かせた。

 黙り込んだ私を見て、冬季は溜息をついた。
「もしかして……、光希は自分が見えないのか?」
「え。見える。が、他人の光の様子程、自分の光は、良く見えない……」
「痛みはないのか?」
「酷いのか?」
 裾を持ち上げて訊くと、冬季は、ふい、と顔を背けた。
 そ、……そんなに酷いのかっ?

「光希……」
「うん」
「どんな時に欲情する」
「……。は?」
 いきなり話題が変わっただけでなく、思ってもいなかった質問に、ただ驚いた。
「見て、ではないだろう」
 納得した口調で、冬季は言った。
「触るよりも先に、目で見て欲情するものだが、光希は違うようだな」
 このような話題をする事がなかったので、私の顔が熱くなってゆく。
「う……ん。……触る感触があって、からだが」
 冬季は額に手を当てて黙り込んだ。
 別に、己の性に対する常識が人とかけ離れているとは、思わなかった。

 大体私にとっては、見える人物の姿が発光体で、肉体的な実感は皆無であり、触ってから初めて実感を得ている。今迄に触れた覚えのある人物は、男性と子供だけで、日常意識する事はなく、恥ずかしい事だが、専ら己の手の感触だけが頼りで、女性の体がどのように違うのかも知らない。村の女性を含む全員が私に触れる程近寄らないし、信者の女性と軽く握手した事はあっても触れたと思う程触れた事もない。
 強いてあると言えるのは、桃花だ。気紛れに重ねてくる唇は、確かに心地良くもあったが、子供に対して可愛く思う気持ちが勝り、女性以前の存在だ。無償に守ってやりたい気持ちすらあるので、そういった対象にはならなかった。
 こうして考えてみると、性に対する知識が乏しいように思える。

「とにかく、今後、気を付けてくれ」
 うん、と頷いたものの、何に気を付けるのか分らない自分に気付いた。
「余り肌を見せるな、と言っている」
 冬季は、私が理解出来ずにいるのを明らかに見抜いて言った。
「す、少しもいけないのか?日常生活が出来ないだろう?」
 冬季は軽く息を吐くと、再び黙った。おもむろに、板の間に腰かけている私の脇に片手をついた。その覆い被さってくる圧迫感に、慌てて再度、分った、と返事した。
「良かった……」
 冬季は体を起こし、安心した声で言った。
 己の鈍感さに気付いた。彼は、身を持って私にも分るように教えてくれようとしたのだろう。何気ない動作でも時として誘っていると取られかねない事を。視覚的な事を考えてくれと、言いたいに違いない。今迄、私に対して、そう言った事を気を付けろ、と教えてくれた人は居なく、有難く思うべきかもしれない。そう思考に耽っていると、冬季の顔が脇におりており、囁かれた。
「私を好きになった時には、容赦なく服を脱がすがな」
「ふっ、ふゆ、とし」
「何、気障ったらしい事言ってやがんだ。このムッツリが」
 割り込んできたのは一郎の声だった。冬季が背にしている裏口に立っていた。
「立ち聞きしているような奴に言われたくないな」
知っていたのか、驚きもせずに冬季は返した。
 してないしてたと、仲が良いのか悪いのか、子供の様なやり取りを二人は始めた。
私は気が抜け、靴を雪の中に隠した事を思い出し、着替えに行く事を二人に言って、靴を持ってその場を後にした。


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そろそろ光希に「無防備な子」させておくのも限界なので……ね。
カットしようか迷った……。


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痣(あざ) 2

 がこ
 後退りした足が積まれた薪に当たって音が立ち、ひやり、と肝が冷えた。
 折角それた二階の姥様の注意を引きたくはない。だが、掴まれている手首も振り解ける力ではなかった。
 何に怒っているかも分らないが、とにかくここは宥めるしかない。
 焦りを押さえて私は、一郎の髪の短い頭を、よしよし、と撫でた。
 功を奏したのか、手首を掴む手の力が緩み始めた。

「何処に行こうとした……?」

 首に唇を押し付けられた感触があり、体を堅くした。
 ……何?
 鈍痛に顔を顰めた。いきなりの事で何をされているか理解出来なかった。着物の合せ目に手が掛けられ、押し広げられた。きつく着付けてあるので喉元が緩むだけで済んだが、肌に熱く湿ったものが這ったのが分った。
 血迷ったのかっ。
 そうとしか思えなかった。胸に顔を埋めている一郎の左耳を探った。
「っ」
 耳を探る手も抑えられ、咄嗟に頭突きを食らわした。さほど反動もつけなかったのだが、一郎は顔を押さえて薪置き場を飛び出していった。
 私は着崩れた着物を直しながら呼吸を整えた。
 顔の熱が引かない……。
 一郎ごときに何を興奮しているのか、と己を叱咤した。彼の行動は全く私には予想が出来ない。
 ……誰か来るっ。
 雪を踏む足音が聞こえてきて、思考から現実に戻った。

 足音は社務所の裏口の方からまっすぐ薪置き場へと向かってくる。一郎かもしれないが他の誰かかもしれない。隠れる場所がないので、薪置き場を自分から出た。
「光希?」
 冬季だった。意外そうな声で、何で……と訊いてきた。
「向こうの雪の上で、一郎が伸びている、が」
「痛そうにしていたか?」
 思わず心配になって訊くと、何があった?と訊かれ、頭突きを食らわした事だけを言うと、冬季は、じっと黙った。罰の悪さを覚え、話題を変えた。
「冬季。学校は?平日だろう?今日は」
「ああ。休んだ。一昨日、否、昨日か。二日酔いで休んだのだが、今朝も、未だ酒が残っててな。起きれなかった」
 薪置き場を飛び出してゆく一郎を見掛けて様子を見に来たのだろうが、冬季で良かった。
「雪駄は?足袋のままで外に出たのか?」
「あっ、そのっ、これはっ。不可抗力というやつだ。うん」
 冬季は小さく笑った。
「社務所に入れ」

 自宅待機の命令が出ていて戻りづらい事を言うと、尚更着替えぐらいした方がいい、と言って冬季は私を裏口へと入れた。
 濡れた足袋を脱ぎ、裸足で土間に入った。
 私を板の間に座らせると、冬季は少し待つように言い、濡れた足袋を持って廊下の奥へと向かった。
 あれほど往復していた姥様の息子達の姿がない。
「神事は一段落して皆、一休みしている」
 冬季が、蒸しタオルを手に戻ってきて、教えてくれた。
 片足ずつ足を拭いた。熱いくらいのタオルが雪に冷えた足に気持ちいい。
「やはり、今年は例年より、早いな。雑用を手伝う口実で様子を見に来たのだ……が……。光希」
 土間に戻っていた冬季が、不意に、私の前に蹲み、左の袴の裾を持ち上げた。
「一郎がやったのか?」


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痣(あざ) 1

「部屋を出よう」
 一郎に腕を引っ張られ、私は書庫から出た。
 覗き見る体勢のまま、桃花は未だ笑っている。

 刺激したくはないが、戸に寄り掛かられていては、閉められない。
 桃花の肩口に、顔を寄せ、優しく言った。
「そこを退いて貰えるかな?戸を」
 さっ、と桃花が腕を、廊下の方へ上げた。
「姥様」
 ぎくっ、として私が廊下の方に顔を向けるのと、一郎が東の窓を開けるのは、同時だった。

「舌噛むなよ」
 一郎は私を片肩に担ぎ上げた。ズボンの前ポケットから何かを掴み出し、窓の外に向って投げた。
 自分の足で逃げた方が早い。抵抗する間もなく全身が強い風と落下感に襲われた。強く抱え込まれ、激しい衝撃があると共に息が詰った。大きく息を吸い込んだ時にはもう、一郎は私を抱えたまま、 書庫の真下に当たる薪置き場に身を移していた。
 ま、まさか……、窓から飛び降りた?
 ドサドサドサッ
 さほど離れていない場所から、雪の落ちる音が聞こえてくる。
 降りる直前に一郎が外に向かって何かを投げたのは、雪の積もった枝を狙ったに違いない。一本の枝の雪が落ちれば、他の枝もゆさぶられて次々と落ちる。着地音は誤魔化せるかも知れないが。
「こりゃ。……こりゃっ。止めれっ」
 桃花の笑い声、本の落ちる物音、姥様の叱る声が上から聞こえる。
 ……桃花様が私達を庇ったのか?まさか。否、でも、……もしや……。
 姥様が来る事を教えてくれたのは桃花だ。思っていたよりもずっと状況を把握する力があるのだろうか。
「ここにへってならねど、何度言ったら分るっ。分らね子だなっ」
 バンッ
 窓が閉められ、内の障子も激しく閉められる音がした。続く叱咤の声と、駆け回る桃花の軽い足音。 それを追う、もっと微かな姥様の足音。
 何故、桃花様が……?
 部屋を去る桃花の足音がした。書庫に入ってくる姥様の足音がして、書物を片し始める音が続いて聞こえてきた。やがてそれも消え、私は安堵の息を吐いた。
 桃花様の気紛れだろうが、何であろうが、助かった。
 未だ担がれているのに気付き、足をばたつかせて降りる意思を示すと、足からゆっくりと下ろされた。早々、社務所に向おうとすると、つん、と裾が引っ張られた。振り返ると、一郎が足元に蹲んでおり、左裾を摘んでいた。
 薪置き場には戸がなく、出入口近くは雪が入り込んでいる。
 何か踏んだか、と足袋を踏みしめると、裾を大きく持ち上げられた。足の付け根辺りまで冷たい外気に晒され、一郎の手を退かそうとすると、今度は手首を掴まれた。
 ……怒り……?
「俺一人で行こうかと思ったが……。止めた」
 手首を握り締める手が段々と、締め付けるように、力が強くなってゆく。


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二階から飛び降り……。
無謀。まさかこの記事を読まれた方でする人は居ないとは思いますが、真似しないでくださいね。
クッションになる程積もる地域はツララが相当デカイです。軒下には落ちて割れて尚デカイ氷の塊が。ザックリボックリなんてことになるかもネ?
一郎に死しんだり怪我されたりされると物語が止まる作者理由で無事に済ませているだけデス。


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『NYC』 『Chemicals React』 『Cedo ou Tarde』 『Misery Business』 『Tongue Tied』

曲載せ記事第4弾です。
YouTubeから気に入って拾ってきた曲です。
適当に、本当に適当な選曲ですので、
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ボリュームある曲のストックが切れましたので、いつもより曲数を増やしました。

曲は追記部分に載せてありますb
『NYC』 『Chemicals React』 『Cedo ou Tarde』 『Misery Business』 『Tongue Tied』…の続きを読む
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