神が泊まる村

蓋を開けたのは誰?  陰(いん)の闇が溢れた。 長編小説連載中。

光希

 はっ、と目が開き、私は目を覚ました。

 またあの夢か……。

 今迄眠っていた筈なのに、どくどく、と胸が苦しい程に高鳴っている。忘れようとしても忘れられない記憶が夢となって繰り返され、いつも心臓が飛び跳ねるような衝撃を感じて目が覚める。

 いつもの事だと、胸を押さえて嘆息し、布団の上に起き上がった。寝巻きとして着ている着物の寝崩れした襟元を直し、布団の上に掛けておいた丹前を引き寄せて腕を通す。顔の前に落ちてくる髪が鬱陶しい。そろそろ切らなくては。雨戸の隙間から日の明りが細く差し込んでいるのが見え、光の具合からして、朝の六時くらいである事が分った。

 しまった……。寝坊だ。
 慌てる気は起きなかった。生来のんびりとしている私の性格は、母親譲りだ。

 ……くす。
 思わず零れた笑みに自分で吃驚した。
 両親の夢を見た後は決まって、一人きりになった孤独感と消失感、恐怖と嫌悪感とを、反芻(はんすう)し、笑う余裕などなかった。

 牡丹雪の少年の夢の所為か?

 いつもと違うところと言えば、少年の夢ところぐらいだ。今朝始めて見る夢だ。

 おかしな少年だ。本気で言っていたな、あれは。神になるなどと。

 くすくすくす。

 笑みが次から次へと出て止まらなかった。まるで新しい話を聞いた時と同じように胸がわくわくしている。
 恐れ知らずと言うか不謹慎と言うか。大胆な子だ。どうするのだ。あの耳の穴は。まだ子供のうちに開けてしまって。

 笑みを止めた。たかが夢の中の少年の身を案ずるなど、馬鹿馬鹿しいと思った。

 雨戸を開けに立った。年末の大掃除以来開けた事がなかったが、今朝は何となく清涼な空気を吸いたく思った。結露に濡れる硝子戸を開け、木製の雨戸に手を掛けた。

 おや?

 戸がするすると滑るようにして動いてから、凍っていない事に気が付いた。今は二月の半ばだ。框(かまち)に結露が溜まり、戸をがっちりと固定するかのように凍る。朝の内に融ける事はない。お湯を掛けて融かすか自然に解けるのを待ち、開けるのである。手間の面倒臭さが、開けなくなった理由の一つでもあった。だが、今朝は難なく開いた。

 思ったより外は暖かいのかな。

 隙間から顔を出した途端、日の光に目が眩んだ。暫くすると目が慣れてきて、見慣れた杉林が見えてきた。

「桃花(ももか)……様?」

 白い雪の中に一人の少女が立っていた。





主人公です。人となりはわかったかな。
次は、村で唯一の少女「桃花」
つづく




出だしは試行錯誤の連続でした。改稿前
展開も変えてみました。改変前。
どちらがいいかと言うと、がらりと実は全体を変えたい。なんて(^^ゞ

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