神が泊まる村

蓋を開けたのは誰?  陰(いん)の闇が溢れた。 長編小説連載中。

独り待ち 1

 夕食を杉林の家屋で済まし、相変わらず閉めきった部屋の中、私は、火鉢に鉄瓶を載せ、手を翳していた。
 風を伴い激しく降っていた雪は、夜になると小止みになり、葉擦れの音もなく静かになった。

 コチコチコチ
 古い壁時計の音だけが耳に大きく響く。

 冬季が二人を連れて来るのを、何をするでもなく待っていると、昼間の喜右ヱ門の行動を思い返してしまう。

 神社に村に独り逆らい、進もうとする私を止めるだけの行動には思えなかった。

 足の甲をゆっくりと撫で摩る掌の感触。

 どういった気持ちから来る行為なのか、恋人を持った事がない私でも、分った。

 冬季は喜右ヱ門から話を聞けたのだろうか……?

 時計の字盤には、白いシールが数字の上に貼られており、墨で書き直されてある。長針と短針にも同様に細長いシールが貼られ、色付けされている。

 喜右ヱ門の手によるものだ。

 物自体が放つ不可視の光を見る私の眼には、とかく細かい所が判別し難い。
 時計は木製で、人の手が多く加えられているのか、プラスチックで出来た物よりは見易いが、文字盤とその数字、針、全てが金属と、材質が同じだと、ぱっと見、時間が読めない。
 不便さを感じない目の事で唯一困っていた事であった。
 それを知った喜右ヱ門が、以前、これではどうですかの、と細工してくれた。お陰で数字がはっきりと見え、針がどこに向いているか分るようになった。

 こうした時計のように、奉仕の面だけでなく日常の細かいところまで、喜右ヱ門は常に私に良いように考えしてくれた。
 それにより、どれ程助けられてきたか。
 神社に養子に入った当初は互いに、喜右ヱ門も私もぎこちなかった。しかし、一緒に雑事をやっている内に、徐々に慣れ、次第に信頼し合うようになった。
 そう思っていたのは私だけだったのだろうか?

 喜右ヱ門にとって、私は何なのだろう?

 喜右ヱ門は、私にとっても、何なのだろう?

 あの時、私は手を振り払わなかった。
 驚いたからだけではなく、全く違和感がなかった所為だった。

 一郎はそんな私を見抜いた。

 さぞかし妙な奴と思っただろうな。

 神事で慣れている。そうなのだろうか?

 頭の中に色々な考えが湧き上がり、答えを出すのが恐ろしくもあり、悪戯に考え淀む。

 時刻は八時を回っている。




つづく



第四章。始めました。(←年内ギリギリセーフ)
続きは明後日?かも。ちょいと出かけてきますです(^^ゞ
TVに飽きた方、記事トップに主人公と副主人公の紹介記事へのリンクを貼りましたんで、暇潰しにどうぞw
皆さん、良い年越しをw

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