神が泊まる村

蓋を開けたのは誰?  陰(いん)の闇が溢れた。 長編小説連載中。

拝殿の奥

 神泊神社の拝殿は、渡り廊下で社務所と繋がっている。
 神社の者でない一郎には、掃除をさせていない場所である。
 雑巾とバケツを社務所内から持ち出し、橋のような渡り廊下を渡って拝殿の側面にある扉から、内に入る。

 風が吹き通っている。

 面の扉は、禊斎が始まった時から開かれている。
 対面するようにある本殿に通じる奥の扉も又、ここでは開かれている。

 風は表から入り、奥へと通っている。

 拝殿内には奥が見えないよう、几帳が重なるようにして配されている。多くの白布がはためく様は、風の存在を力強く感じさせ、神めいた感じを見る者に与える。

 床は長い間丹精籠めて磨き続けられてきた事を物語るかのように、表面がつるつるとし、滑(なめ)らかに節が浮き上がっている。
 私は固く絞った雑巾で、吹き込んだ雪を退かしながら面の方から床拭きを始めた。重なる几帳を越し進むにつれ、奥の建物が見えてくる。

 扉は閉められている。

 喜右ヱ門が掃除担当の場だ。あそこの床もここと同じく磨き抜かれ滑らかだ。神事期間が始まってからは使われた後にする事になっている。上着の内ポケット辺りをぎゅっと握り締めた。

 今は未だ……。

 見慣れない光も闇もここにはない。
 私は唇を固く結び、再び床を拭き続けた。




つづく


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