神が泊まる村

蓋を開けたのは誰?  陰(いん)の闇が溢れた。 長編小説連載中。

桃花

「みつき」

 あどけない少女らしい声。
 雪の中を転げ回って遊んでいたのか、少女の羽織っている赤い半纏には白い模様が出来ていた。

「桃花様。たくさん雪をつけて。風邪をひきますよ」
 外に立つ少女と目線を合わせるよう私は、框(かまち)にしゃがんで言った。

 少女は、くす、と小さな笑い声を漏らした。
「春が来る」

 少女はそう言って、足元の雪に指を刺した。
 何だろうと気を取られている内に、少女は框の前から軽やかに身を翻し、消えた。
 私は雪の上に追って出た。
 もう居ない。家の角を曲がって見えなくなっていた。
 
 彼女の気紛れは今に始まった事ではない。
 相変わらず足がお早い。
 やれやれと私は、彼女が立っていた場所に視線を戻した。

 ……花がついている。

 桃花が指差したのは、一振りの枝で、先端に白い小さな花びらが開いていた。

 私は枝を取って、追い続けるように家の角を曲がった。
 家屋からの熱と除雪で周りだけがお湯で穿ったようになっている雪の壁を登り、雪面へと出る。杉林の積雪は子供の背丈程はあろう。雪面を斜めに上っている細いU溝が、外へと出る道だ。
 少女の姿はやはりなかった。

 春が来ている……。




つづく



もう、何もいうまい。→改稿前
彼女の行動には、基本、変化はないんだよね。

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