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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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蛇神-喜右ヱ門編 2

 深深(しんしん)とした雪間の晴夜だった。
 やや欠けた寒月が山々の上に浮かび、杉林の暗い中、所々青白く照らされた雪原を、喜右ヱ門は光希の家(や)へと向かった。

 いつものように戸口の前で、呼ばおうとして、躊躇した。
 夜の10時を回り、電灯は消され、零れる一筋の光も無い。
 光希は9時には床に就いてしまう。眠りが浅く、耳聡い彼の事だから、声を掛ければすぐにでも起きるだろうが、大声で呼んで驚かせるのに気が引けた。
 喜右ヱ門は、急ぎの用事を携えてやってきた。
 この家は、鍵がいつも掛けられていない。

 入って静かに起せば宜しかろ。

 引き戸に手を伸ばした。
 人の動く気配が硝子戸の向こうにあったかと思うと、ガラリと開かれた。
「急ぎの用みたいだね。……喜右ヱ門」
 喜右ヱ門を驚かせてしまった事に気付き、光希は軽く詫びる笑みを見せた。秀麗ながらも幼さの残る中学三年生の彼は、既に、私と言っていた。信者達の手前があり、それ迄の幼い言葉遣いを改めるよう、姥様が早い内から言いつけたからだ。

「よく、お分かりになりましたの。我(わ)だと」
「分るよ。雪を踏む音で」
「お休みになっておられなかったんで?」
 彼が寝巻きではなく、平素の服装をしているのを見て、喜右ヱ門は予想外の驚きを再度見せて、訊いた。

「昔の神事の記録など、読んでいた」
 この頃の光希は、神泊神社の歴史に興味を持ち始め、内実の足跡とも言える神事の記録を熱心に読んでいた。
「なんぞ目新しい発見など、ありましたかの?」
「無いね。墨で消されているばかり」
 光希は軽く肩を竦めて見せた。
 その小さな薄い肩越しに、喜右ヱ門は家の中を覗き見た。
 相変わらず、電気が消されており、本など読める様子ではない。神事の記録は全て、墨で書かれた手書き。暗闇でも物自体が放つ不可視の光を見る光希には、照らす光などなくとも関係なく読めるのだろう。

「光希様を迎えに来ました」

 真面目な口調になった喜右ヱ門に、光希は何か気付いたような顔をして、ふいと、山の斜面を見上げた。
 暗い木立の向こうには、社務所が存在し、固定した火が揺らめきに見え隠れしている。
 神の為に灯される篝火だ。
 闇の中、目印であるかのように明々と燃え盛る様は、夜の神事に相応しい。

「まさか……」
「……神泊りですの」

 光希が飲み込んだ言葉を紡ぐ様にして、喜右ヱ門は頷きながら言った。
 夜の篝火は、この村に於いては、神泊りの最中である事を知らせる標にもなっていた。
 先を急ぐ喜右ヱ門に急(せ)かされ、光希は斜面を登り始めた。

「お早く」

 社務所の前に辿りつくと、入る前に、光希は奥の直角に建つ拝殿の方を窺った。
 その奥には更に、神事が行われる場所、神泊処がある。
 どちらにも、明りが一つも灯されていない。

 神泊りが本当に起こっているのか。

 光希の顔からは、そのような疑問を抱いている事が、ありありと感じ取れた。


 | 目次 | 

別窓 | 第4章 告白→6 蛇神-喜右衛門 | コメント:6 | トラックバック:0
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この記事のコメント

■chachaさんへ
うぉっ、早っ。
もうここまで読まれた!
だけでなく、コメ辺している間に怒涛のコメがついてる!(笑)
ありがとうございます!!(感涙)

感動が落ち着くまでと、少し時間を置いたのですが、まだ抜けない(笑)
ゆっくり読めて幸せな気分を、昨日、chachaさんのところで味わいましたv
そして、今日、最高に幸せな気分を味わいましたv
改めて、素敵なフィナーレをありがとうです!v-354

たくさんのコメ、ありがとうですvv
はい☆神事は何をするのか、明らかに☆
生まれた子供には、幸せな事なのか。
疑問があるところです(苦笑)
子供に話して納得する子供は、居ないでしょうしねぇ……。
それでも……と、望む方が居ない訳じゃないかな、なんて。あはは(汗)

本当に、日本の宗教文化は変わっていますねv
私もそう思って、この物語を書き始めたのですv
博識なんて、とんでもないですっ。
興味を抱いた事柄だけを集めたものばかりで、
本職の方が読まれる事は、無い。と思いたいところです(笑)
神社の不可思議さが好きで、
日本人の美的感覚の元はそこにあるかな、と、愛情篭ってますv
そう言っていただけて、メッチャ嬉しいですv

それに、こんな長編を書く事も、もうないだろうと思うと、愛着がわいちゃって(笑)

登場人物のそれぞれの視点、
一度頭の中がパニクっちゃって、苦労したところなので、
面白い、それぞれの気持ちが分かると言っていただけて、
悩んでよかった!!と、そういってくれたchachaさんに感謝っす☆
ふふ……。皆、腹を割るのかしら?おほほほっ、痛っ、だ、誰かに殴られた?

一郎:エモンに喋らせろ。
c.p:いま、エモンが進めてるじゃない。
一郎:本当に全部、喋るのか?
c.p:あ!ゴ○○リ!
一郎:どこ?
--c.p、逃げ--

光希、健全ですv つるんとした顔でvうふふw
でも、恋愛対象が、ねぇ?あはは♪
恋愛の心を持っているか、それも怪しいところですv

季節外れの神事。嫌~~な雰囲気、漂ってますv
ほぅっと、息を吐いたらっ。
うわ、私までそこに居るような気持ちになりますっv
ありがとうございます(^^v
短い言葉で伝える事ができるchachaさんを、私の方こそ、見習いたいですv

エモン編は、じわじわと、エモンの心境の変化を辿ってゆく内容になります。
光希の傷はいつついたのか、ぐ……、自主規制っでっすっ(><)
この後も、楽しんでいただけたら嬉しいです♪

素敵な物語を読ませてくれたchachaさんに、感謝を込めてv-414
(笑)
2007-04-01 Sun 20:19 | URL | c.p #-[ 内容変更]
追いつきましたよ~うははは☆
いやもぉ、最近忙しくてやっとゆっくり読みに来れたのです^^
あぁ~幸せでした☆(笑)

まず・・・神泊村の過去が明るみになりましたね。
そうか、神事って・・・そういうことをするんだったんだ。
いやいや、一郎と同様、ちょっと勘付いてはいましたが^^ふふ☆
神が宿り、その宿った者と交わって、子を産む。
確かに、子供が授からない人や、信仰深い人なんかにはもってこいの神事ですね!
子供にとってはそれが幸せかどうかはわかりませんが・・・

神社や宗教、信仰とは本当、日本ほど様々な種類ある国も珍しいですが(笑)
c.pさん、すごく知ってますね!博識だ!そこにまず驚きました☆
それほどに、この物語を描く上で愛情を注いでいることも感じました。
だからですね、読み手としては本当に興味深くて、心惹き込まれて読むことを止められない(笑)^^;

光希、冬季、そして今度はエモンくん。
様々な視点から過去を見ていけて本当に面白いです!
そして、それぞれが思っていたことがわかる。
腹を割って話し合うとはこのことですね^^
全て話し終えた頃、きっと4人は心許し合える仲になっていそうな予感です☆

そういえば・・・
今回、「目覚め」から読み始めたのですが・・・
光希が朝だちとは・・・キャッ!><(笑)
一郎の気持ちわかるわかる~!光希って何だかそういうの、一切無い感じがしておりましたが(笑)
良かった、健全な男子だ^^ぷぷぷ☆

識峰さん、神泊まりの時期が過ぎた今頃に!?
光希の傷跡、そして、エモンくんの様子を合わせると・・・嫌~な展開が待っている予感><
ドキドキしますよ~!!
あの、雪が静かに降る、しんとした雰囲気が本当にここまで伝わってきて
思わずほぅっと息を吐いたら白いんじゃないかと錯覚しました(笑)
やっぱりc.pさんの描写は素敵です~!^^
2007-04-01 Sun 17:36 | URL | chacha #-[ 内容変更]
■kazuさんへ
Kazuさんのドキドキ受信―――っ
愛をc.p、送信ーーーーっ
毎日覗いてくれて、ありがとうですぅ!

喜右ヱ門編は、静かに、静かに、進み、
嵐の前の静けさ、まさにそうです☆
いつも通りなのに、何かがすでに違う“怖さ”
気付いたのは自分だけではなく、他の人も……という、“怖さ”
怖さが怖さを強くしてゆくような感じを、書きたいなと思っていました。
上手く書けてるかな?
「こう……」というkazuさんの出だしが、怖さを伝えて、Goodですv(←こやつ……)

光希の身に何が起こるか!?もっとヤバイのは……うふふw(自主規制)
kazuさんに桜色の愛をv-238


■kikurageさんへ
静けさの中の物々しさ、ぉおぅ☆
雰囲気を引き上げる素敵な言葉をありがとうですw

神事による被害(?)は、まさにkikurageさんがおっしゃった順序通りです☆
心理的に受けた傷の深さも、その順序です(笑)
どれくらいの傷の深さか。
具体的に喜右ヱ門の心情を書くには、難しい。ので、
起きた出来事を追ってゆく構成になりますv
そして……。
光希の「神泊村的英才教育」w
形から入って、内実を知ってゆく、その過程も明らかにしてゆきますv
相変わらず鋭い方ですw
エモンも、この時にはすでに慕っている風であります。
明らかになってなかった喜右ヱ門の過去、そして現代に至る、重要なきっかけとなったシーンを含めて……と。
エモン編は内容的にはてんこ盛り(苦笑)
さまざまな視点から楽しんでいただけて、すごくすごく嬉しいです☆

静けさw神が降りる場所では、音や声は、「神様への~」とつきますので、
それ以外では静けさがつきものかな、と。
あ。肝心な神泊処、拝殿の一部ではなく、別個に離れております。
場に至ってから載せた方がいいかなと、今まで曖昧にしてきたところで、説明不足ですみません。m(_ _ )m
「4」で詳しい説明をしますねv

季節外れの神泊り☆
放送規制気味なところもまたありますが(苦笑)
ゆっくりと楽しんでいただけたら幸いですv


■楓さんへ
楓さんがその場にいるようなコメ、嬉しい(笑)
雪国の方は、雪の振る音でさえ聞き分けるとか何とか(←どっちだ)
特に光希は音に敏感♪それを読み取っていただけて、ありがとうです☆

暗闇で本を読むなんて、もう人間じゃない様子ですね(笑)
あははw光希の凝り性は私似ですw
私の場合は、脇にお菓子と飲み物必須☆

静まり返る拝殿には、何かが待ってますv
防犯ブザーを光希に手渡してやってください(笑)
なんて、管理人が喋ると本編の雰囲気がガラリ?(苦笑)

エモンなりに知っている事、隠している事、光希に対する思いへの変化。
そして、物語の重大なヒント。
てんこ盛りな上、時間間隔がこれより更に遡る箇所もあり、
上手くかけてるかな?と不安でもあったりします(^^ゞ

土日は、更新をお休みしまして、月曜からまたUPします。
嗚呼……の『蛇神』編、
じわじわ、じわじわと進んで参ります(^^v
2007-03-31 Sat 12:20 | URL | c.p #-[ 内容変更]
嵐の前の静けさ・・・
深々と降り積もる雪・・・
きゅっきゅっと雪を踏みしめエモン君・・・
それを足音だけで判別する光希君・・・うーん、さすが♪
神事の記録を読んでいた。不可視の光で・・・
光希君の勤勉で凝り性な性格が垣間見れました。
そして・・・
そして静まりかえる拝殿・・・
嗚呼やな予感が・・・ビクビクッ・・・
エモン君、君、何か知ってる?隠してる?それとも・・・
2007-03-31 Sat 02:06 | URL | 楓 #u2lyCPR2[ 内容変更]
エモン編のお話は、光希君達が、中学三年生と齢15位の時期ですね。
過去の話を時間軸にしますと、一郎君→光希君→冬季君→エモン君になりますね。

この頃になりますと、光希君のしゃべり方、第一人称が「私」と、大人びた言い方。
社に身を置く者として、相応しい「神泊村的英才教育」を、識峰さんならびに、姥様に徹底して教え込まれる光希君のビジョンが浮かびました。

既にこの時、エモン君の光希君に対する言葉使いも、幼馴染ではなく、格が上の人として、慕っている様な、現代と同じ対応ですね。

そして、エモン君からの「神泊り」の知らせ。
神事が行われると言う拝殿の中の神泊処。
辺りは、静けさだけで、本当に行われているのかと、不安になるぐらいの雰囲気ですね。
肝心な神泊処で、最後の神泊り!とても気になります(>_<)
2007-03-31 Sat 01:50 | URL | Kikurage #-[ 内容変更]
こう、嵐の前の静けさのようで、しん・・と雪深い風景がこれから起こる何かを雪で隠しているようで、なんだか読み進めるたびにドキドキと・・・
何が起こるんだろう・・・光希くんの身に何が・・・
エモンくんが声をかける前に気づいた、光希くん。
若いのに、大人びた口調で、穏やかな光希くん。
彼の身に・・・わぁぁん・・・彼の身に?!

c.pさんの愛を、土曜日待ってますよーん←なんだかやばい人・・・。
2007-03-30 Fri 19:39 | URL | kazu osino #7av6LuR2[ 内容変更]
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