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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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蛇神-喜右ヱ門編 3

 襖の向こうやら廊下の奥やら、社務所内は人の動く気配が、そこかしこにあった。
 切迫した様子で、姥様の息子達が動き回っている。土間を横切るその手には救急箱。

 どこにも寄らずに喜右ヱ門は、奥の座敷に光希を連れて行き、袴姿に着替えさせた。
 着物は長着ではなく、半着。着物の一種で、足首丈の長着よりも丈が短く、膝程の物だ。動き易く、光希の、未だ未だ中学三年になっても幼い域から脱しない体型に合わせて用意した物だった。神饌を供えるようになって二年。この頃にはもう慣れたもので、喜右ヱ門の手も借りず、光希は一人で着替えた。

「灯(あかり)は灯さないのですか?姥様」
「明りを嫌う神じゃ。灯すと暴れ出される」

 いつの間に部屋に入ってきたのか、姥様が隅に小さく正座しており、光希が極普通の態で訊いた。姥様も驚く事無く、応えている。
 光希は少し首を傾げた。

 神泊りが深夜に起こった場合は、社務所から離れた家(や)に住む光希を呼ばずに、社務所内で起居している姥様の息子達に任される。
 今迄はそれで支障はなかった。

 疑問が解消されない様子をありありと顔に浮かべる光希に、喜右ヱ門が仔細を話そうとした時、姥様がゆるゆるとした調子で続けた。

「今宵、お泊りになった神は、雪明りさえ、お嫌になられる。良く、辿り着きなさったものよ。遣戸(やりど)はおろか戸という戸を今は閉め、中は真っ暗闇。したが御神酒なりとも供えない訳には、ゆかぬ。子供達に持たせたが真っ暗闇。気配だけが頼りだが、その気配が分らぬ、と言う。して、見当違いの場所に供え、お怒りに触れ、ままならぬので、お前(め)を呼びにやった。我の子供達には見えぬ光が見え、僅かな気配も分るお前じゃ。  良く、仕えよ」

「……粗相のないように……ですか……?」
「良く、仕えよ」
 光希の問いに応える事無く、言い含めるように繰り返し言った。そして、小柄な身体を、すい、と立ち上がらせ、先導の向きを取った。
 喜右ヱ門は慌てて、用意しておいた三方(さんぽう)と呼ばれる四角の桐の台を、手に取った。
 白い陶器の徳利と杯。御神酒だけが乗っている。
 光希は白く細い手に受け取ると、姥様の後に続いた
 喜右ヱ門も二人の後を追った。


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別窓 | 第4章 告白→6 蛇神-喜右衛門 | コメント:4 | トラックバック:0
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この記事のコメント

■kazuさんへ
姥様、怖いですね~。
推敲中、この人が一番化け物じみていると思いました(笑)

じわじわ、一歩ずつ進んでまいります(^^ゞ
喜右ヱ門編はエモンの心境の変化を辿る旅になり、
物語の最後の謎だしも含めてありますv

光希のドキドキな展開、
いきなりドッキリは、今回はなしです(笑)
といいますか、後回しです(笑)
お付き合いいただけたら嬉しいです☆

■楓さんへ
胃が痛くなってしまいました!?
桃花に看病に向かわせますv
あ。嬉しくない?あはは~v
何々、もっと成長した女性が好み?
すみません。神泊村には、あとは、
元少女の姥様しかおりませぬ(苦笑)

光希が呼ばれた訳は、暗闇でにっちもさっちもいかなかったからでしたv
「深々と降り積もる雪の音(ね)すら聞こえてきそうな・・・」
楓さんの言葉に、本当に聞こえてきそうですv
自然に奏でる音は、「おと」でなく、「ね」と。
何となくいいですよねv

エモン中心の章になりますが、
「椿童子」あとの、エモンが光希をどう思っていたのか、
怖いもの見たさでこの先を楽しんでいただけると嬉しいですv
2007-04-03 Tue 22:38 | URL | c.p #-[ 内容変更]
姥様・・・あのばばぁまた光希君を・・・
もう姥様が出てくるたびに胃が痛くなりますね。
暗闇を好む神・・・
戸という戸を閉めたこの拝殿で頼りは光希君の目のみ。
なるほど、光希君が呼ばれた訳は分かりました。
したが、やっぱ・・・危険な香りがぁぁっ!!
雪明かりさえ嫌われる・・・
何でしょう、この得も言われぬ神秘的で、それでいて奥深い表現・・・いいですね。
深々と降り積もる雪の音(ね)すら聞こえてきそうな・・・
そして、再び光希君が・・・みつき・・・み・・・つ・・・ああっ!!!
こ、こわ楽しみですっ!!!
2007-04-03 Tue 00:56 | URL | 楓 #u2lyCPR2[ 内容変更]
■隠しこめさんへ
了解ですv(o^-^o)v
2007-04-03 Tue 00:11 | URL | c.p #a2H6GHBU[ 内容変更]
うー、何か本当にドキドキしてきます。。。
闇を好む神が識峰様に泊まった・・・・。
神饌を・・・せめてお神酒を捧げたいが、闇の中では姥様の息子たちは神の怒りに触れてしまう。
そこで呼び出されたのが、光希くん・・・・。
粗相のないように、よく仕えよ・・・・。
・・・・・・
うわっうわっ、もう叫びだしたいけれどうまく喉から声が出てこない、そんな恐さです。
一歩ずつ一歩ずつ、識峰様の待つ所へ・・・・近づいていく光希くん。エモンくん。
そして、kazuもドキドキしながら近づいていく感じがします・・・・。
2007-04-02 Mon 19:41 | URL | kazu osino #7av6LuR2[ 内容変更]
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