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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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蛇神-喜右ヱ門編 6

 喜右ヱ門は、光希が入っていった遣戸の前で、息を殺し、意識を耳に集中させていた。

 静かだ。

 遣戸が全てぴたりと閉じられている。
 さして大きくはない建物だから、物音がたてられれば聞き取れるものだ。だがしかし、人が本当に入っているのだろうか、と怪しまれる程、静寂そのものだった。
 杉林の家に光希を呼びに行く前にはもう、神事志願の女性達を入れ、始まった態を整えさせていた。

 しかし、よくもこんな時期の外れた時に、しかも夜中に、女性達が来たものである。最近は、子宝を望む女性だけでなく、霊感を開発したい、と言う女性信者も多かった。神事の通常時期が過ぎて宿泊所も空であるから、連絡を受けて態態やって来たのだろう。
 神泊処に入った神事希望者は、神霊が一度なりとも抜ける迄は出られない決まりではあるが、例外もある。
 荒い神霊が泊まった時、危険を察した時は出ても良いとされている。

 喜右ヱ門が橋を掛けるようになって、4年余り。
 泊まる神霊は様々である事が分ってきた。

 意志があるように、言語のようなものを発する神霊もあれば、声を発する事すら知らぬ気な神霊もある。
 殆どが、生身を得たら得たらで、生を謳歌し、感銘を与え、滞りなく神徳を授け去ってゆく。
 何もせずに去ってしまう神霊も居る。人に近い神と、そうではない動物に近い神が居るのだろう。
 いずれにしても、性質は泊まるまでは分からず、それも分かるのは、神主をかつて務めた姥様と現在の神主のみ。

 喜右ヱ門が手伝いとして赴く神事は、交わりを求める神の時の方が多かった。
 それは光希の場合も同じだった。

 目の前のぴたりと閉じた遣戸を、喜右ヱ門はじっと見詰めた。
 中には数人の女性の他に、光希が居る。
 未だ静かだという事は、どちらか分りかねているのか。

 光希様は、粗相などなされぬ。
 姥様が言った言葉を思い出し、胸の内で強く否定した。

 光希がいくら気を付けているとは言っても、神霊の機嫌など、分らぬという事も分っている。
 荒い神霊が、年にあるかなしかの回数で、泊まる。その性質は泊まるまで分らない事が多く、何かの拍子で光希は損ねてしまった事があった。起き上がれない程の殴打をされた事もあり、そうなった時、神泊処から退去させる為に、喜右ヱ門は泊まった神の質を問わず必ず着いていった。

 粗相など、なされぬ。
 待つ間の心を落ち着かせる呪文のように、繰り返し呟く。その胸中の奥底にある思いは……。


 | 目次 | 

別窓 | 第4章 告白→6 蛇神-喜右衛門 | コメント:7 | トラックバック:0
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この記事のコメント

■kikurageさんへ
ムフフ☆(←怪しい?(笑)
今回の神は、特にデリケートな注意が必要な神でした。危険です☆
人に宿る時には、更にデリケートさが要求され、
兆しが分かるのは、経験者のみで、他の人は分かりません。
分かってしまったら、もう、経験者の枠に入る事と思い、
精神的なところでの分け隔てとなる、微妙加減ですv

光希、怖くない訳ではない。
私もそう思い、恐ろしさを凌駕する気持ち。
後にこの章で、光希には光希なりの訳があったのだと、
明かすつもりではありますが、かなり亀の歩みになります(苦笑)

識峰の初めの“泊まり”。
書いてないところまで考え至ってくれてありがとうですv
うふ♪(汗)詳しく考えていませんでした(^^ゞ(←おいおい)

「開放された」とは、人為的なものが。うふふ☆
神泊処は、元の祭祀場、初めの“岩”があった場所に建てられました。
岩がなくなっても、“場”自体にも泊まりやすい場所なのだろうと。
建物で覆う事で、いい加減な考えですが、
ある一定度、“閉じられた”空間に。
“泊まる”ステップを踏まなければ、
“出られない”と設定させていただきました。
識峰の初めての泊まりは、外に出ていますので、
神泊処で起こったものではなかったのかな~と (^^ゞ
フラフラと外を歩いているのを、
姥様か、誰かが見て姥様を呼んで、
“泊まった”と分かったのかな、なんて。
そこを書くと別の話になってしまうので、考えから省きました(苦笑)

しかしやはり、予想外の降臨(?)は、危険!という例であります☆

若き三人が招集され、神事を識峰がこなしてゆく。
その全ての裏には姥様が必ず存在する。
「神よりも人の方が」時として……。(^^ゞ


■chachaさんへ
大丈夫、と思っていても、エモン、光希が心配です。

一回も失敗した事はないのは、どんな優等生だ、そりゃ、と、
管理人判断で(苦笑)、物語として載せていない部分で、
殴り倒された事にしました。辻褄あわせました(^^ゞ
エモンとの距離も丁度いいかな、なんて☆

愛情を知らず、育ったエモン。
学校の行事で他の母親の姿を見る事もあっただろうに。
(↑と、思って、あれ?となったのですが(^^ゞ)
「そんなもんだ」と思うところがあったのでしょう。

背景をこの後少し入れますが、それでもやはり、
辛抱強さはピカ一だけど、哀しい子だと思います。
管理人も愛情ひとしおです。
そんなエモン。でもやはり、どこかおかしい、です(苦笑)
なので、千尋の谷へ突き落とします(^^;

光希の背中の傷がいつできたのか。
覚えてくださったのですねv
はい、この時に出来ます。

ふふ……。この物語、命綱なしでどこまで落ちるのか、という物語です(自爆)
2007-04-08 Sun 01:22 | URL | c.p #-[ 内容変更]
楓さんへ

ムフフの使い方は、色々です(怪しいだけだろッ!

ご自由にお使い下さいませ(^▽^)つ♪
2007-04-06 Fri 01:02 | URL | Kikurage #-[ 内容変更]
心配、なのね?光希が。
前にも失敗したことがあったなんて・・・。
でも、そうですよね、どんな神が宿るかわからない。
どんな性格なのか、気質なのかわからない、読めないのだから、こちら側としては難しい所です><

エモンくんも、立場的には冬季や光希と似た境遇にあるようなもの。
親は(片親だけど)いるけれど、愛情を一切知らずに育ったエモンくん。
辛い、だろうな。

そんなエモンくんは今、光希が無事出てくるのを願っていますね。
もちろん私も願ってますよ!><
でも、確かこの時に出来た傷なんだろうし・・・光希の。
あぁ、続きが気になるけれど、ちょっと読むのが怖いです><ドキドキ!
2007-04-05 Thu 23:59 | URL | chacha #-[ 内容変更]
物静かで、戸は締め切って、雪明かりさえ嫌う。
人に宿る時は、相当にデリケートな条件が必要なのですね!

確かに、どんなタイプが宿るか、その兆しが分かるのは、経験者である姥様か神主ですよね。
他の人は、実際に宿って見ないと判断が出来ない。
とても、危険な事ですよね。
過去実際に、光希君は神の宿った神主に強打を受けて立てない程の事があったのですよね。
光希君は、万が一の事を考えると、怖くない事が無い様にも思います。

今回で、かなり見えてきた部分は、あの忘れられない出来事があった夜、識峰さんには、神が宿って、危険な状態に陥った為に、開放され外に出られた訳ですね。
その捜索として、光希君と、冬季君と、エモン君は召集されたんですね!!
2007-04-05 Thu 23:40 | URL | Kikurage #-[ 内容変更]
■kazuさんへ
エモンと一緒に是非、ドキドキはらはらしてくださいv
鼻からすんなりと出す予定ではなかった管理人なので(苦笑)、
光希が無事、戻ってくる事が、何よりも彼の安堵だと、
言われて気付きました(^^ゞ
大丈夫。その内、出てきますv
無事かどうかは……(笑)
じりじり、閉じた遣戸を睨んでエモンと待ってやってくださいv
管理人も、休みまでの日数をじりじり中(笑)


■楓さんへ
女口調の楓さん、キター☆おいでませ(笑)
何事もなく、ここの管理人、出しゃしません♪(←鬼)
でも、切に願う気持ち、エモンも同じかと思います。

エモンの想い、その過程は複雑(苦笑)
段階を経て、
同じようなフレーズを繰り返しつつ、
じりじり、じりじり進みます(^^;ゞ

昨日、今日と、関東は寒いです(^^ゞ
ストーブを閉まった管理人、
フローリングの床の上、手をこすり、
足の先を痛くしながら打ってますv
そんな管理人もなまかに☆
2007-04-05 Thu 21:49 | URL | c.p #-[ 内容変更]
何?!!
思いは・・・
思いはなんなのよっ?!!!ウオオオオッ
・・・はっ!
つい女口調に・・・笑
何事もなく帰ってきて欲しいと切に願う気持ち99%と、
ほんの1%のムフフな思い・・・?←kikurageさんパクリました。ごめんなさい。笑
じりじりと橋の下で待つエモン君。
寒さに手をこすり、足の先をきんと冷やしながら、
僕も一緒に光希君を待つことにします。
2007-04-05 Thu 19:56 | URL | 楓 #u2lyCPR2[ 内容変更]
エモンの内面を語るように進んでいく話が、とても雰囲気を出していて、ドキドキしてきちゃいます。
光希くんは、以前神の機嫌を損ねたことがあって。
粗相などしない、粗相などしないとエモンくんは呪文のように自分に言い聞かせている。
何事もなく、早く光希くんに戻ってきて欲しいじりじりとした、エモンくんの心情。
・・・・、中では何が起こっているんだろう・・・・。
じりじりしながら、kazuも待ちます・・・・。
2007-04-05 Thu 18:46 | URL | kazu osino #7av6LuR2[ 内容変更]
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