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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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蛇神-喜右ヱ門編 9

 喜右ヱ門は、日常において光希が不便であろうと思うところを、自ら進んで世話をするようになった。
 手書きで数字を書き直した壁時計がいい例である。そうした度に、光希は心からと思われる笑顔を見せ、喜右ヱ門も見えないと知りつつ、笑顔を返した。仕えて当たり前という空気の中で育った為か、己のした事に笑顔が返ってくるのが新鮮で、それまでに知らなかった喜びをもたらし、繰り返しずっと与えられ与えたいと思った。
 その笑顔が光希の顔からなくなり始めた。

 神泊処に神饌を、光希は上げに。喜右ヱ門は打橋を掛けよ。

 姥様から命令が下り、返事を渋る喜右ヱ門とは反対に、光希は案外、すんなりと受けた。
 ぎこちなさを、喜右ヱ門は取り戻した。母親にかつて抱いた嫌悪や光希に抱いた嫌悪を、思い出してしまった。

 光希様も……。

 血の呪いに飲み込まれてゆく……。

 見るべき方向を見失ってゆく。

「喜右ヱ門。……識峰様を……救えないだろうか?」
 神饌を上げる役を担わされて、二度目の神事期間中。
 不意に光希が呟いた。
 神泊処から下がってきた直後だった。
 役を回されると黙って従っていた光希。背筋を伸ばして三方を奉げ持つ姿に、迷いは見られなった。強制的に神事を受けさせられた時よりかは、神饌を奉げて下がってくるだけと、幾分、気が楽なのだろうと思っていた。

「こんな事を言える立場ではないのは、分っている。
所詮、識峰様に守ってもらっている身なのだから……。
しかしどうしても神事とは言え、私にはあのような事を続けている識峰様が、苦しそうに見えて仕方がない。
……救えないものだろうか……」

 最早神事から心が離れている喜右ヱ門には、考えも及ばない事だった。
 否、考えても仕方のない事だと、知らず心のどこかで割り切っていた。
 神泊りの中でも、神主となるのは、血の呪いに身を堕とした者。
 希望など無い。

 光希は、どのような者が神主になるのかを、知らない。
 だからこそ、真っ向から向かい合える。
 救おうと考えられる。
 そんな光希が。

 神泊村を正常な道へと戻す、最後の光のようだと、思えた。


 | 目次 | 

別窓 | 第4章 告白→6 蛇神-喜右衛門 | コメント:3 | トラックバック:0
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この記事のコメント

■楓さんへ楽しみにコメントを読んでましたvありがとうですv

この章を書き直すにあたって入れた、
光希を最後の光に思うくだり。
村色に染まっていない光希の背景。
他三人の背景。それぞれの背景の違いまで。
読み込んでくれて嬉しいですv(^^
救いの可能性はあるのか?
彼らが力を携えて村を浄化する事が出来るでしょうか?
どうしようかなと思いつつ、闇を深めてゆきます(^^ゞ


■kazuさんへ
コメントを元気の元に頑張ってますw
管理人:エモーン!!ちょっと来て♪
エモン:か、可愛い若奥さんに可愛いだなんて(真っ赤)
管理人:うんうん☆ほら、入って入って☆
エモン:クロネコヤ○トの箱じゃねぇべか。
管理人:時間帯指定☆kazuさんへの贈り物☆
    何時がいいですか?kazuさん(笑)
――いそいそと箱に入るエモン――
管理人:……。(笑み)
エモン:……。わ、ワン!
管理人:心意気十分!頑張ってこい☆(←おいおい)

エモン、一郎を超える、光希の大親友になっていたかもです。
同じように奉公しながら、光希の見ている先は違っていて……。
今はエモンワールドにv浸ってやってください(^^
2007-04-14 Sat 18:01 | URL | c.p #-[ 内容変更]
エモンくん、・・・可愛い☆
今までやることが当たり前。
感謝されることはなく、当たり前の事をやっているとしか思われなかったエモンくん。
光希くんは、エモンくんに感謝される喜び、自分に向けられる笑顔を教えてくれた存在なのですね。
その笑顔を見るために、その笑顔を見せてもらうためにエモンくんは光希くんの世話を進んでやくようになって。
そんな時に言い渡された、神泊と斎の仕事。
それをすんなりと受け入れた、光希くん。
ぎこちなくなっていって・・・

でも、光希くんは心から意に従っているわけじゃなくて。
識峰様を救いたいと言い出した。
エモンくんには思いつかなかったこと。
それを心におもいながら、勤めを果たしていた光希くん。
エモンくんには眩しかったでしょうね。
同じように奉公しながら、前を見て考えをめぐらせる。

・・・・・ああぅぅっ、なことがこの先起こるとわかっていても、今はエモンくんワールドに浸っていたいです・・・
2007-04-11 Wed 08:39 | URL | kazu osino #7av6LuR2[ 内容変更]
神泊村を正常な道へと戻す、最後の光・・・
確かに光希君だけは、この村にあって異色というか、
凛とした空気を持った少年ですよね。
村色に染まっていないと言うか、
村の一人であり、神事に携わっておきながら、
それを冷静な瞳で見、判断し、識峰様を苦しそうだと思える心を持っている。
それは、やはり光希君のご両親、そして育ってきた環境に寄るところが大きいのでしょうね。
エモン君から見れば、それが眩しくもあり、
不思議でもあり、故に、何か特別な感情を抱いてしまう。
最後の光と、そう思うようになる。
自然な流れ・・・ですよね。
村に生きるエモン君
村に生きつつそれを客観的に見る光希君
村で生まれ外の世界から村を見る冬季君
そして、村にやってきた一郎君
まさに四者四様・・・
彼らが力を携え、村を浄化する日が果たして訪れるのでしょうか?
2007-04-11 Wed 00:22 | URL | 楓 #u2lyCPR2[ 内容変更]
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