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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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蛇神-喜右ヱ門編 18

 火鉢にかけた鉄瓶が、ふつふつ、と湯玉の上がる音を立てている。
 誰も何も、喜右ヱ門が語り終えても、言わなかった。

 三人がやって来てから沈黙が初めて、我家に降りた。

 無言の内に、私は背に片腕を回し、古傷の辺りを触った。
 否。まさか。……そんな……。
 手が、熱い何かに、触れた。
 何っ?
 驚いて振り返ると、それは一郎の手だった。
 ほっ、とする間もなく、背筋を撫で下ろされ、びくっ、と背が反れた。

「居ねぇな」
「なっ?居てたまるかっ」
「背中弱いな」
「弱いも強いもあるかっ。お前を除いて皆、ここに居る者は、真剣なのだぞっ」
「は?笑っているぞ。冬季は」
「え」
 一郎の言葉に、まさか、と顔を向けると、肩を僅かに震わせながら口元を手で押さえている冬季の姿があった。
 声を殺して笑っているようだ。
 初めて態度に出して笑っているところを見た。
 私がまじまじと見ているのに気付いたのか冬季は、ゆっくりと手を外しながら言った。
「光希が、一郎に居て欲しい、と言った理由が、今、分った……」
 声に笑いが残っている。光も軽く、柔らかい。
 何が分ったというのだろう。
 得心されても同調出来ず、憮然として正面に顔を戻した。

 お気楽な私達の会話など聞こえていないかのように、喜右ヱ門は身動ぎ一つしないでいた。
 光は、我家に来た時からと変わっていない。暗く、塊のような黒い光をしている。

「我は光希様を……独り占めしたかった気持ちがあったのかも知れませんの……。
姥様の思惑通りに嵌ってしまったと、後になって分かりながら……。
我自身の欲望に、負けたんだの……」

 少なからず私は衝撃を受けていた。
 過去二つの神事の出来事が姥様の思惑通りであった事。
 喜右ヱ門が私をそういう対象として見る事があったという事。だが、昼間の行動が全てその感情からとは思えなかった。

「昼間の行動はそれって訳か」
 一郎が言った。
 その一言で、喜右ヱ門の黒い光のところどころから眩しい光が発され始めた。
 まるで溶岩の割れ目から内側の冷える事のない熱が覗いているように。

「聞きたい事は、細かいことも含めて、たくさんある。それについては、お前も察しは、ついている」
「……」
「だが、一切話す気はない。その顔は、そういう顔だな」
 一郎は軽く肩をすくめて言った。

 どのような顔なのか。

 この時ばかりは、私は、喜右ヱ門の表情を見たいと思った。
 喜右ヱ門の黒い光は、何事をも話さないという意思の表れのように見えていた。それが今は所々眩しい光が覗き、あと一押しの質問で、一気に割れ溢れ出しそうに見える。
 私からしかし、何かを訊くのは、喜右ヱ門の光が私に向けられているように感じ、酷く怖く思えた。

「お前は何を守っている?」

「光希様を」

 一郎は喜右ヱ門の強い声の応えを無視し、私に顔を向けた。
「本人に訊いてみよう。喜右ヱ門が知らない間の出来事を。神泊処の中で何が起こったのか」

 私は目を一度強く瞑った。
 話す勢いが正直削がれ、話したくない気持ちがあった。逆に勢いづいた一郎を止める術も思いつかず、喜右ヱ門も明かした今を逃しては、話す明かす必要も無い話になってしまうだろう。

 話したところで、理解されるとも思わない。
 姥様の思惑があろうと、私は私の想いがあって神事に挑んでいた。

 後にどうなっても構わないという諦めもあって、同じ晩の事を語り始めた。


 | 目次 | 

別窓 | 第4章 告白→6 蛇神-喜右衛門 | コメント:4 | トラックバック:0
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この記事のコメント

■kazuさんへ
「目が覚めたように」
エモンの話に入り込んでくれて、ありがとうですv(⌒¬⌒*)

「支離滅裂な感想」だなんてっ、そんなことはっ。
心の内にあった世界をさらけ出したエモン。
一郎を無視しつつも、そうは出来ない、
むしろずっと秘め続けて我知らず大きくなっていた想いが……。
過去を語りつつも、水面下で変化が起こっていますv
一郎が居なければ、どうなってたか……。

「光希編」を始めている現在ですが、
もう少し詳しく、光希の想いを書きたかったな~とも、思いつつ、
出だしを後で訂正しようかなとも、思いつつ(苦笑)
突っ走しらせる所存でっす(^^v


■chachaさんへ
お話、ゆっくり読みたいと思っているのに、
「更新されたかな~」と、
ちょこちょこ携帯から覗きに行ってしまうc.pです(苦笑)

あははwエモン、踏み止まりましたw
彼が踏み止まらなかったら、一体、姥様はどうするつもりだったのか?
怖い怖いと思っていた管理人(笑)
Chachaさんの中のスクリーンに
異様なものを焼き付けさせてしまったようで(^^ゞ

私もですv
楓さんとkazuさんのコメントには、
毎日元気を貰い、感謝感謝の日々ですv(^^v

エモンの話が終わり、一息つきましたv
イイのか悪いのかw一郎が居る限り、シリアスにはなりきりません(笑)
きっと、はい☆
光希の中でも知らずしらず大きな存在になっていると思いますv

光希視点の「蛇神」、
是非続けて読んで頂けると嬉しいでっす(^^v


■楓さんへ
メラニス降臨だぁぁああああああ!!(嬉!!)
丸呑みっすかっ。うふふふふふふっ(←ブキミ!)

「一郎が恋しい」思っていただけて、嬉しいw
c.p :一郎♪お礼は?
一郎:男に思われてもなぁ……。
c.p :(光希も男ですが?)←心の声。
   とりあえず、
  - 一郎の頭掴んで -
   お礼☆
  - ゴン!(←一郎の額が机にぶつかる音) -
   ありがとうございます(^^☆

今までの冬季と違う、微妙な変化、
秘密にしていた事がなくなった事、
抱いた気持ちがエモンと似ている事、
徐々に解け始めていますv氷解でっすv
解かし、流れ始めてゆったら、一郎、
うまく舵を取れるのでしょうか?(苦笑)

楓さんに、適うとも思えないと、そこまで思わせる姥様、
作者ながら、只者じゃない!と思って、嬉しかったり(笑)
光希には三人の神!
吃驚&嬉しいです!!(><)
うふふv本当に、先々まで読んでおられるような?
最後に残る神様は誰でしょうwと、
ラストはどうしようと、悩んでいるところ(笑)
心に残るラストにしたいな♪と、思っています(^^v
2007-04-29 Sun 17:18 | URL | c.p #-[ 内容変更]
光希君・・・背中弱いんだ。

うふふっ、
可愛いわぁ。
私だったらその蛇ごと食べてあげたのに・・・くっくく

と、メラニスが言ってました。笑
一郎いいですね。
ナイスキャラだ。
そしてそれに思わず笑みをこぼした冬季君・・・
彼も自分をさらけ出したことで、少し変わってきたのかな?
それとも、神事を受けた光希君に対し、エモン君が自分と同じような感情を抱き行動してしまったことを知り、逆に同じ匂いをエモン君からかぎ取って、それが彼の心を氷解させた?
ちょうど「一郎が恋しい」と思っていただけに、
ここでの一息は絶妙でした♪
それにしても、

「お前は何を守っている?」
「光希様を」

のくだり。
いつだったか、「俺がお前の神になってやる」
と言った一郎君の言葉を思い起こし、
かつ、冬季君の独白をも思い起こし、
光希君には三人の神が居るのだと、
そう改めて感じました。
・・・もっとも、彼らが姥様に敵うとも思えないのですが・・・苦笑
そしてそして、
いよいよ光希君が語り出すんですね~☆
2007-04-24 Tue 13:32 | URL | 楓 #u2lyCPR2[ 内容変更]
ずっと、密かに毎日読んでおりました、chachaです(笑)
もぅキャッキャ言いながら続きを楽しみにしてました!
鼻の穴膨らませて!(笑)
エモンくん、このまま勢いに任せて・・・!?とかも思ってましたが、どうやらブレーキかけれたみたいで安心^^
そして、光希の中に、蛇神??
その異様な光景が目に焼き付いて離れません;;
そして、姥様の不気味な笑み・・・
ひぃぃぃ!@@;
と、なってたのですが、どうしても楓さんのコメント、kazuさんのコメントで大笑いしてしまって(笑)
いつも「あれ?何書こうとしてたんだっけ?」ってなっちゃいまして^^;
現実に戻ってきた今回で、ようやっと落ち着いてコメントです(←うわ!責任転嫁だ!笑)

本当、こういう時にこそ、一郎の存在って大きいなぁ^^
光希はまだ気づいてないようですが・・・きっと知らず知らずのうちに自分でもそんな一郎の存在を、大切に思ってるんだと思うのです。

今度は光希視点からのお話。
さて、神泊処の中では一体何が起こってたんでしょう??
続き、楽しみにしてます^^
2007-04-24 Tue 01:12 | URL | chacha #-[ 内容変更]
一度現実に戻りますって前回教えてもらっていたのに、ふっと目が覚めたようになった女、kazu参上v-389
エモンくんは、心の中に隠してきたことをさらけ出して。
その上で非難も何もしない、一郎くんの普通どおりの、「背中弱いな」という 言葉が沈んで暗い感情に陥るかのような雰囲気を、客観的・・・もしくは現実的に戻してくれている。
一郎くんがいなかったら、こんな話することなかっただろうし、冷静に話すことなんてなかったはず。
ある意味、枷が少しはずれ始め、心の中に隠していることでそのまた中に隠してきた光希くんへの想い・・・・冷える事のない熱・・・が、徐々にあふれ始めてきてしまっているような・・・。

・・・支離滅裂な感想になってます@@;
そして次回!!あの神事の様子を語るわけでござんすね!?
光希くんが!!
「話したところで、理解されるとも思わない。
姥様の思惑があろうと、私は私の想いがあって神事に挑んでいた。 」
・・・ききき、きになりますよぉぅ
よぉぅぉぅぉぅ・・・
2007-04-23 Mon 19:15 | URL | kazu osino #7av6LuR2[ 内容変更]
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