神が泊まる村

蓋を開けたのは誰?  陰(いん)の闇が溢れた。 長編小説連載中。

逢瀬山 2

「本当に……雪が低いな。ここは」
 一郎が足を止めた入り口付近で言った。
山の中にぽっかりと現れた平面。冬の初め程しかなかった。
 私と冬季も中程へは進まずに足を止めた。

 ……未だ、誰かを待っているのか……。

 少ない積雪は、待ち人の為に敢えて整えられた場所のように思え、誰かを待っているように感じられた。
誰を、とは分らない。
 只、まったく変わらない風景に、私の中の時間が戻ってゆく。

 待ち人は来ないだろう。
 ……哀しい……。

 この場所は知っている。待ち人は遠くへ去ってしまい、戻らない事を。
それでも尚、待ち続けている。
 幼かった頃は、哀しいという感情が分らなく、変、だと思った。
自分の身に起こった事と空虚な場の雰囲気に飲まれた事で、雪と共に凍って融けなくとも構わないと思い、自虐的な精神状態になった。
 再び同じ場所に立ち、取り乱さずにいられるのは、識峰と親しくなり、一郎とも再び会えた事が救いとなっているからに違いない。
 私の待ち人は、戻ってきた。
二人も。
それでも。

 未だに哀しさを覚えるとは……。 

 足を進め、平面の端にある椿の前に立った。
 高さはなく、胸辺りしかない。妙なこの場所の雰囲気に似合うよう、そうしてあるのか、断ち切られたかのように、雪が平らに積もっている。雪の一部を払い除けると、色が現れた。

 赤い、赤い花。
 ……待ち人を待ち続けている……。
 この花は、この場所の不思議の訳の全てを、知っているのだろうか。
 鮮やかな赤い色。
 ……出会いが、悪かった。
 時を止めたかのような、椿の姿。
 ……粗相をしたのだろうか、私は……。
 花に手を添え、花弁をなぞる。
 冷たい……。
 切られたように肩の痕が痛んだ。

 神事でしか繋がりがないのか……。

未だ哀しさを覚えるのは、識峰と疎遠な関係になってしまっているからだろう。
 山頂の方へ顔を向けた。
 この山を越えると、更に高い山へと通ずる。
 馬鹿だな。私は。
積雪が低いのは、只単に雪が溜まりにくい地形なのかもしれない。
 追憶を止めた。

 平面の中央に向き直ると、一郎と冬季が何事かを話し合っていた。
 何だろう?
 二人の話は終わったようで、互いに頷き合った。
 耳が冷えたのだろうか。一郎が左耳に手を添えた。
 金属だから、さぞ冷えるだろう。
と、見守っていると、一郎の掌が閃いた。
 あっ?っ。
 雪の上にピアスが落ちた。

「一郎っ?」
「悪ぃ。探してくれ。光希。こう暗くちゃ、見えない」

 ならば放るなっ。
 言いたい事を言うよりも先に探し始めた。
 白い雪の中にある、たった一つの異物の光。普通ならば小さなピアスなど見付けられるものではないのだろうが、不可視の光を見る目で探せば、すぐに見付け出せる。

 たかがピアス。されど。

 一郎の温もりから離れたピアスは、雪の上で冷え切っていた。掌に収めると、私の体温が極々奪われたが、小さな金属の存在に、ほっ、と息が出た。

 これは、幼い頃の約束の印、だ。
 もしや一郎は、これを放ったように、放棄する気なのだろうか。話を聞き、私などどうでも良くなったのか?

「一郎っ」
 振り返ると、一郎の姿はなかった。

コメント

■楓さんへ■
意図的で、いじめです(笑)
冬季も底意地が悪いですね〜vあ、元々か(←コラ)
結論が出たようで出ない次回、待て(←ゴルァ!)

蘇りますか?あの時の残像がvどもです☆(^^
冬季が何を思うか、気になるところ。
一郎は、まぁ、どうでもいいとして(ぇ
光希は、ぶっ飛んでしまっています(ぇえっ?

さすが楓さん♪ピンポイントに☆嬉しいっす(^^
こうしたポイントは後々の伏線になっていまして、
原作そのままに残した部分でもありますv
(今では書く・訂正できないのが本当の理由←え。)
過去の自分、すごいぞ?(笑)
何気なく書いた文章が、後々におもしろく感じたり。
楓さんのもそうですよね(*^ ^*)
嬉しいため息を励みにがんばります(^^v

■chachaさんへ■
ええ、はい、すみません、
うちの一郎がとんだイタズラを。(笑)
続きをまってやってください(><

光希の為、(〃▽〃)そうなのですv
が、.。* ゚ + 。・゚・(ノД`)……所詮、一郎の浅知恵だから(笑)
光希には荒療治(?)で、どう転ぶかって感じでv
(↑ひどい親)
ちょっと危ない入口の前に立ってもらおうかなと。(ぇ
いつか乗り越えなくては。
うんうん(*^ ^*)
楓さんから頂いて、勝手に「このシーン」と決めた、その時を、
光希ともども目標にしてます☆(^^

読めば読むほどだなんてっ。いやだわ奥さんっo(≧∇≦o=o≧∇≦)o
(↑壊れてる)
噛めば噛むほど。スルメと同じ魅力ね☆(←違う)
褒められると、元気になって、ふざけに走る困った管理人です(^^ゞ
いやもう、chachaさんのように、もう少し読者にやさしく、分かりやすい文章にできないのかと、
頭を絞っている最中ですよーっよーっ。(←やまびこ?)

え?え?

一郎!?なんで?どうしてそんなイジワルを!?@@;
でも、きっと光希の為に何か企んでいるんだと思うから・・・><
ここは!ここは我慢して続きを待つとです!!(笑)

本当、楓さんも言ってますが、読めば読むほどc.pさんだなぁと^^
この描写というか、表現の仕方はc.pさんにしか出来ませんよぅ!やっぱり憧れちゃいます^^

過去を思い出して、苦しくなって。
それでも、いつか乗り越えなきゃいけないから・・・
今回のことで、光希が何らか変われたらいいなぁと願ってやみません〜><

一郎????
いじめか??笑
明らかに意図的に投げましたよね。
そして、一緒にうなずきあっていた冬希は???
いったい何をたくらんでいるのでしょう?あの二人。
そして……
ああ、この場所、寒椿!!
よみがえる、あのときの残像……
冬希は、一郎は、そして光希は、ここで何を思うのか?

……粗相をしたのだろうか、私は……。
 花に手を添え、花弁をなぞる。
 冷たい……。
 切られたように肩の痕が痛んだ。

このフレーズ、最高にc.p.さんだ!と、その独特の趣ある描写にため息です。
更新、楽しみにしています!

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