神が泊まる村

蓋を開けたのは誰?  陰(いん)の闇が溢れた。 長編小説連載中。

寒椿 4

「俺に対しては、再会の時から凄く抵抗してたな」
 一郎は言いながら漸く腕を離し、私を解放した。
 そう言われても、さしたる理由がない。
「これは冬季の考えであって、俺の考えでもあるんだが」
 至極ゆっくりと息を吐き、私は頷いた。

「濃くも薄くも、神泊の血を持った者同士は、惹かれ合うんじゃねぇのかな。濃ければ濃い程、それが強い。この村に戻ってきたくなる理由と同じだな。意思とは関係なく、体が引き寄せられる」
「一寸(ちょっと)、待て」

 こいつはまた突拍子もない事を言い出したと、私は眉間に指を当てた。
「性別も関係なしに惹かれ合う、などと。馬鹿な」
「さっきのラブ・シーンがいい例じゃねぇか。それとも、何か?お前、冬季に特別な気持ちでもあったのか?」
「否」
「だろ♪」
「だが、しかし……」
「駄菓子も案山子(かかし)もねぇっつーの。あれ、見ろ」
 くい、と親指で示された。その先には、平面の端に背を向けて蹲んでいる彼の姿があった。
「冬季なんざそれに翻弄されて、あの通り。自己嫌悪中だ」
何を言っている、と、 様子を窺いに行こうとすると、止められた。
「お前には理解が程遠いだろうが、現象自体だけなら分るだろ。男なら」
 さっ、と一郎の手が伸びてきて、掴んで止めた。だけでなく、横っ面に拳を見舞ってやった。二度目だ。体が反射神経で勝手に動いた。
 痛てて、と。大して効いてないどころか反撃のつもりもなさそうな一郎の様子を見て、漸く頭が回り始める。
 え……、まさか……。
 
「さすが、みっちゃん。冬季にはあれで十分、刺激があったんだろう。」
 やはり訊いてない様子で一郎が言った。
 何をっ、と食ってかかったが、冬季の自問しているような様子を見てしまっては、反論しても説得力がない。
「平気……なのか?一郎は」
「いいの?」
「良くない」
 一郎はがっくりと頭を垂れたが、顔を上げた時にはふざけた態度が消えていた。

「冬季には何故か自制が利かなかった……と。場所に問題があるんじゃねぇかと始めは思ったんだが、そうじゃないらしいな。場が違っても変わりはないと、始める前に応えたよ」
 私も似たようなものだと、思い当り、思考を冬季から切り替えた。

「さっきの事は俺が提案した事で、冬季は納得済みだった。傍に俺が居るって分っていながらも、お前を腕にした途端、それがふっ飛んだ。どれ程妙な事か分るか?」
 私とて、鳥肌が立ってもおかしくないくらいだろう時に、全く嫌悪感を抱かず、抵抗もしなかった。どれ程妙な事か、己が一番疑問を抱いている。
「気持を置き去りにして体が引き寄せられてしまう」
「う……ん」
「覚えがあるだろう」
「喜右ヱ門の時も……か」

「神事の時も、だ」

 ぎょっとした私に構わず、一郎は続けた。
「幾ら不敬は禁物ったって、なすがままだったのは、それだけじゃあ、ねぇだろう。神泊の血同士は惹かれ合うが、神泊りした人間には、只単に同じ血筋相手だという以上に抵抗出来ないんじゃねぇかな。しかも、だ。いつも以上に、体が敏感に反応する。そうじゃねぇか?」
 よもや今更違うとは言えない。黙って俯いた。

「そうかも、な」
「だろ」
「だが、私が神泊の血を引いている者だとは未だ、決まっていない」
「いい加減にしろよ。冬季が言ってたじゃねぇか。月森の姓は、タブーを犯した時の受け皿だってよ」
「決め手ではない」
「ああ、そうだったな。もう一つあったな。決め手にかける事実が。桃花ちゃんにお前はそっくりだ。神泊の血は他の血を負かすって、エモンが言ったのを覚えてるか?受け継いでるんだよ。お前は、濃い血を。蛇神だって、泊まったんじゃねぇか?」
「そう決め付けるなっ。この場所に来た理由は、それかっ?」
「そうだ。お前には引き摺られて欲しくない」
「お前の思い通りになると思うな!」
「光希?」
「もし、惹かれあう性質があるとしても」
「おい」
「どうなろうと一郎には、一切、関係ないっ」
「関係なく、ないだろうが」
 体ごと引っ張られる強さで、右手首が掴み上げられた。
 ぐ、と拳に力を入れた時、掴まれた掌の中にある小さな金属を思い出した。
 
「必死になって探してたな」
 後生大事にずっと握ったままだったのか!
 驚きで力を緩めた掌が、温かい手で広げられた。
「何処に俺が帰ったと思ったんだ?」
 笑っているのだろう。顔を近づけながら一郎はピアスを拾い上げた。

 何処に、などと。
 彼が帰ると言えば、今は宿泊所に決まっている。
 それでも……。

「宿泊所ではない、村の外に、か?」

 きっと彼には分らない。
 どれ程彼に依存してしまっているか。存在が大きいか。
 過去を忘れてしまっていたのは、そうしなければこの村に順応出来なかったのと、彼の存在がそれだけ大きかったからだ。そして、再び失う不安が私を悩ませる。

「可愛いな。光希は」
 再び私の拳が閃いた。
「何処にでも帰れっ」
 言い捨てて私は、平らな雪面の出口に向った。
「おいっ。待て!待てって!」
 追ってくる気配が背後にあった。
「話はまだ終わってねぇっ」
 振り返りもせず足を横にして斜面を滑った。

 止まらずに進むと、暗い社務所が視界に見えてきた。

コメント

うふ〜♪

ラブなシーンにはびっくりでしたが!
一郎を心配する(ぷふっ♪)光希くん、可愛いです♪
しかし…血かぁ〜。うむ〜(><)
いろいろと解明されてきたけど!光希くん、まずは自分自身を知らなきゃですね〜。認めて、で、どうするか!
らんらら的には村を出て欲しい(@@。)
お姉さんは心配です…なんだか怖いことが起こりそうで…。

申訳ねぇだぁあああ!

火の粉を巻きながら風に揺れるオレンジの炎
番をしている人の姿が黒いシルエットで窺える

このような光景を見ると、
秋だなぁ……と^^

きゃぁおうっ(><)コメをいただいてから
すっごく時間が経ってるっ(><)
先のコメ辺の後、13時間、下手したらそれ以上の
時間の拘束日が続いて、それが終わったと思ったら棚卸で(>_<;;>_<)。
すっかり遅くなって本当、申し訳ありません<m(__)m>

■隠しコメさんへ■
私でよければ・・って・・、それは読みたいですっ。
期日までに期日前に!(汗
是非ともwコーヒー用意して、読書タイムを作らねばw
伺いますね〜^^

■chachaさんへ■
見えました?w
ここの管理人、ドツボにハマるキャラが好きなんです(笑)
血の因縁によるドス黒さもw(←ぇ
横溝的な、そこに入った途端、「呪われてる」みたいな、
「いやぁあああっ(><」ってな、
因縁の深さと、その「清め」土台ですw
Chacahさんの言葉は、物語の先を暗示しているかのようですw
・・・って、清めまで無事たどりつけるかなぁああああっ?
怖がってくれて、サンクスです(^^w(←変なお礼;;
うふw一郎の仮説は嫉妬から♪
光希の平手は愛の鞭♪・・・ぶw
物語が動いてゆくには、登場人物たちの心が動いてゆかねば。
と思っているので・・・
二人の心をくんでくれてありがとうですv(←冬は放置プレイw

■楓さんへ■
Aクラス入りの健闘、お疲れ様でした!!
惜しくもラブ小説に抜かれ・・
いやいや、
残っただけでも、「冒険物語」のおもしろさが証明されたと思って、
密かに喜んでおりましたです(^^
そんな私は・・・投票〆日までに間に合いませんでした!申し訳ないっす!!(土下座―――っ!!(><)
家に帰る車中、一人の時間、読んでたのですが・・・

ブログ、引っ越されたのですねw
リンク、勿論はりますv(^^w
いやもう、貼らせてくださいw

うふふw因縁ですv冬はベコボコ(笑)
いい感じ〜な、感じ、分りました?
正真正銘かは、本物さんの心理が分らないので(^^;
いやいや、さすがメラメラの生みの親?v(笑
いやいや。哀愁が漂うメラメラに比べ、ウチの光坊は、
「ツンデレ。いっそ女だった方が良かったんじゃ?」
物語を作った当初悩んだ原因となった流れになってゆく・・・
ゆくのかぁああああああああ?????
投稿事態があやしいぃいいいい(><


青息吐息の管理人
リアルに続かないブログですが
ラストを迎えるまで開き続けようと思っております((*_ _ 

あおうおお…
なんて恐ろしい血だ……
まるで、麻薬。
いや、もっと呪われた、因縁?
そんなものを感じずにはいられないです。
ふおおぉぉぉおおぉぉおおおおーーーーーーっ!!←うるさい。笑
冬季、凹んでますね。
そして、きっと光希も。
てか、そうか、それほどまでに彼にとって一郎は…
血のつながりがないにも関わらず、そう思わせる一郎、やるじゃん。てか、血のつながりがないのにいい感じ〜なこの二人って、やっぱ正真正銘の(ピー自主規制)な要素満開?????笑

あ。そうそう。

実は僕ブログ引っ越しました。
魔法のiらんどというケータイ小説サイトです。
ブログの方でも紹介していますので、もしお時間があればリンク願えませんでしょうか??
お手数ですがよろしくです☆

本当に。

副題が見えましたとも。「冬季、可哀想の巻」(笑)
そうか、光希の優美さに皆が惹かれていたのではなかったのね?
血が、そうさせていた。
引き寄せていたんですか。
これは、心のとても深い所でぞぞぞっと鳥肌が立ちました。@@;
身体中を流れている血。
どうあがいても、それはなくすことのできないもの。
村を離れたところで、流れ続ける血を止めることは出来ないから、またここへ連れ戻される。自らの足で。

おぉぉ。恐ろしい。恐ろしいですよぉぉ><

一郎、嫉妬ですよね?(笑)
なんだか今回結構光希に殴られてるな。ぷぷぷ。
でもね。光希がそれほど腹を立てるのは、一郎をとても大切に想ってるからじゃないのかなぁと思うわけです^^

うぅぅ。続きも頑張ってください!楽しみにしてます^^

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