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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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先夢-なごし 2

 ああ……。やはり、なごし、だったのか……。
 夢から覚めた私は、布団から手を出し、顔の上にかざした。
 夢の中で強く握り返してきた、なごしの手の感触が残っているようだった。
 母の手と同じだった様に思え、奇妙な感覚に陥る。

 私がどのような目に遭うのか、なごしは知っていたのだろう。
 否。知っていたかどうかは問題ではない。村内の者であれば、ましてや神社に居た者ならば尚更、神事の内容は周知の事実だ。
 切実な愛情の顕れであるかのような握り方が腑に落ちなかった。

 結局あの後、社務所で別れたきり、彼は姿を消している。名を口にするなと言われたので、境内の何処に住んでいたのか等、姥様に訊ねる事をしなかったし、それでなくとも、神事での出来事と両親の死が重なって、あの日の事自体、記憶から消してしまい気持ちが大きく、夢に見るまで忘れていた体たらくだ。何者であったか等、情報は皆無で、推測する材料すら乏しい。

 何故、今更?
 夢に見て思い出したのか。居ない人物の正体よりも、そちらの方が気になった。

「……ヘマをするな、か」
 助言を思い出す。
 承知して返事したつもりだったが、今となってはまるで分っていなかったように思えた。
 恐らく彼は、心を強く保て、と言いたかったのだ。どんな事になっても。
 私は実際は、山を自由に駆け回っていた頃の自分は跡形もなく、飲み込まれるように流され、神社に村に殉ずる生き方しか出来なくなってしまっている。
 心があると実感出来るのは、識峰への思い。

 間違っているのか?

 枕元に置いたズボンの尻ポケットを探った。小さな金属が指先に触れる。
 返さなくては。一郎に。


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別窓 | 第5章 逢瀬山→3 先夢-なごし | コメント:0 | トラックバック:0
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