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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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衝撃 2

「……誰……だ」
 冬季が布団から顔を上げた。頭をこちらに向けていたので、音がより大きく聞こえたのだろう。
 私は部屋を出て、宿泊所を出た。先程の信者が途中、何か声を掛けてきたが、構う余裕がなかった。窓側に頭を向けて寝ていた一郎の、全く起きる様子がない姿ばかり頭に浮かんだ。
 一目散に神社へと戻った。
 
 宿泊所へは参道の雪掻きを終えた足で向かっていたので、鳥居の所に残していたスコップを引っ掴み、物置に投げるようにして片付けた。すると、社務所の近い台所の窓ガラスの内に喜右ヱ門の光が近づいてくるのが見え、逃げるようにしてその場を離れた。逆の表口から中に入り、渡り廊下を通って拝殿に向った。
 拝殿の扉は開かれている。神事期間が始まってからずっとだ。
 奥にある神泊処の扉は閉じられている。神霊が近づけば識峰が来て開ける筈だ。
 人の気配がない事に安心はしたが、動揺は収まらない。

 拝殿内の床が、風で入り込んだ雪で薄らと白くなっている。日課の掃除を始めた。心を落ち着かせたかった。動揺したまま社務所に行けば、目敏い姥様や喜右ヱ門に気付かれるのは、分りきっている。
 掃除も終わってしまった私は、几帳の陰に座り、立膝に顔を伏せて隠れた。
 動揺している事を誰にも知られたくなかった。

 宿泊所での光景が脳裏に焼き付いて消えない。
 冬季と過ごしている、とは聞いていたが、同じ部屋で寝泊りしている、とは聞いていなかった。
 昨夜、冬季に訊いた時も何も言っていなかった。
 否。あの冬季が少し動揺していなかったか?
 二人が何も話してくれなかった事に腹を立てているのだろうか。
 座り込んだ右の尻ポケット辺りに小さく当る物がある。
 ピアスを放って捨ててしまいたかった。
 
 どれくらい座り込んでいただろうか。拝殿表の方から小さく名を呼ばれた。覚えのある声に応えずにいると、ぺたぺたと、床の上を裸足の足音が近づいてくる。目の前の几帳が少し押し遣られ、太陽の様な眩しい光が現れた。
「見っけ」
「許可もなく、入ってくるな」
 顔を膝に伏せた状態のまま、私は一郎に言った。


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