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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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イツワリ 1

 唐突だとは思わなかった。

 昼間は神事で慌ただしく過ぎた日の夜。
 私は、杉林の家に戻り、床についていた。
 布団の中で目を開いていた。雪の坂から足音が聞こえてきた時から。
 すぐそこまで来ている。

 戸口が鳴った。
 いつも鍵を掛けていなかった。

 カラカラカラ 

 戸が滑る音。
 少し間を空け、又、同じ音。

 襖が、すらっ、と開かれ、閉じられた。
 畳を摺る足音。丹前か。綿の入った着物が落ちる音が続いた。
 背を向けて横臥していたのだが、誰が来たのかは、見なくとも、分った。
 布団の肩辺りに手が乗った。

 私は、背後を向き様に布団を退けた。

 起き上がった私を、微笑みが迎えた。
 何故か、来る事は分っていた。
 来るだろう、と思っていた。
 予感通りの事がこうして実際に起こっていても、驚きはなかった。

 そっと頬を撫でられた。
 冷たかった。
 夜気に冷えたもので、徐々に温まってゆくのは、神泊りしている時の冷たさとは違っていた。頤(おとがい)に下り、親指が唇の上を触れて過ぎた。

「識峰様……」
「嫌なら、そう、言いなさい。無理強いは、しない」

 嫌であったなら、足音が聞こえてきた時点で何等かの行動をとっている。
 頬に触れる掌に唇を寄せた。
 識峰が布団の上に乗ってきた。頤を取られ、上向かされた。
 識峰の唇と私の唇が重なった。
 軽く触れるとすぐに離れ、瞼、頬、額、と接吻された後、再び唇に触れた。頤を落とされ、識峰の舌が私の口内に忍び入ってきた。
「ん……」
 感触に酔った。初めて舌で触れる識峰の舌は、酷く柔らかく、熱も私と全く変わらない所為か、共に溶けてゆくような感触だった。

 唇が離れると浅い息をついた。夢の中の出来事のようで、頭の芯が、ぼう、としていた。
 いつの間にか帯が抜かれていた寝衣の合せ目から、前を解かれ、滑る様に肩から落とされた。剥き 出しになった右肩に息を感じ、昔噛まれた箇所に唇を寄せられ、小さな悲鳴が口から出た。
「やっ……」
「大丈夫……」
 識峰は落ち着いた声で優しく言った。
 何度も傷痕を啄ばみ、背に回した手の指で、もう一つの古傷の辺りをなぞった。恐怖とは違う意味で、体が震えた。
「……痛いかい?」
「今はもう……」
 横に頭を振った。
 識峰が身を離し、自ら寝衣の帯を解いた。
 はらり、と前が開き、白い肌が現れた。
 腕が伸ばされて首を抱かれ、唇を重ねられてくる。識峰の、吸って、と言う囁きに応えるように弄ってくる舌に己の舌を絡ませた。互いに初めて合わせる筈だったが、呼吸も同じく深く絡み合い、心地良さを生んだ。
「ん……んん……っ」
 いつ迄も張り付いている識峰の寝衣を、肩から摺り下ろした。触れる肌の感触が心地良く、大きく触れたかった。識峰もそうなのだろうか。私の胸や背、素肌を大きく撫でてくる。
 飽きる事無く触れてくる手も肌も、酷く気持ち良く、安心と興奮を産んだ。
 私達は膝立ちに唇を重ね続けた。

 腰に下りていた識峰の手が下着を下ろしていった。恥ずかしさに身を捩った私を、布団に寝かせた。隠そうとする手をすり抜けて、既に己を主張しているものを握ってきた。
「……っは」
 軽く触れられただけでも、甘いような痺れる感覚が背筋を走った。
「は、ん、ん」
 口内を逃げるように動く私の舌を、識峰が舌先で弄んだ。
 触っては離れるを繰り返され、唇の間から洩れる声が、次第に焦れた鼻声になってゆく。望みを裏切り続ける手は、更に腿の内側へと下がり大きく広げた。脚の間に識峰が体を入れ、視界の下に消えた。
「っは……」
 深く呑み込まれ、息を飲んだ。
「あぁあっ」
 今迄に感じた事のない強烈な刺激に、大きな声が出た。唇と舌に嬲(なぶ)られ、記憶にない程昂ってゆくのを感じながらも、止められない。包まれる感触が、これ以上ない程、気持ち良かった。敏感なところを剥き出しにされて舌先で刺激され、頭の中が焼き切れそうだ。もう、と限界を訴えた。

「……ひっ」
 識峰の頭が上下し始め、限界を超えるのを感じ、上体を起こして体を引いた。識峰の体の下から逃げたところで足首を掴まれた。
「止める、かい」
 識峰は口元に微笑みを浮かべたまま、目を細め、言った。
「逃げられる、とでも……?」
 驚きのまま私は、曖昧な首の振り方をした。

 ……っふ

「っ」
 細身の体のどこにそんな力があったのか。布団の上に引き戻された。
「本気で、逃げるか、抵抗してごらん……」
 乱暴に下半身を弄ばれ、顎を上げた。
「う……」
 急激に突き上げてくる感覚に我を失いそうになる。

 識峰の微笑みの裏側の素顔が見えた様な気がした。
 見透かし、飲み込もうとする残虐さ。

 この人はもしかしたら、私を望んでいるのではないかもしれない。
 彼が愛撫をしているのは私であって、私ではない。
「……あ……」
 違和感を感じつつも、高まり続ける感覚は静められなかった。

「止めろ。識峰」

 声が響いた。聞いた事のない冷酷な声で、はっきりと識峰を拒絶する声色でもあった。
 どこから。自分の唇が動いていた感覚があった。自覚がなく、別人が発しているかのような感覚だった。だけでなく、冷静に、しかし一片の許しの無い怒りをもって、睨み続ける自分すら、他人の様に感じた。
 驚愕そのものの顔をして識峰は、布団の上を飛退いた。
 バンッ
 障子を一気に開き、半脱ぎになった着物の前を閉じる事もしないで、外に走り出して行った。

 助かった……。
 完全に姿が見えなくなると、虚脱した。訳が分らなかったが、救われたと思った。


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