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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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ナゾナゾ 1

 朝になり、参道へと登った。
「お早う」
 坂道の上で、明るい挨拶が送られてきた。
 雪掻きをさぼるなと私が言ったのを、覚えていたのだろう。足元にスコップ二本を刺し、一郎が待っていた。
 私は少しの羞恥と、無くした物が見付かった時と同じ安堵を、何故か覚えた。
「お早う」
 夕べの事は話さずにおこうと決めた。

 二人で雪掻きを始めた。
 鳥居の所迄済ますと、雪にスコップを刺し、一息入れた。
「……降りそうだな……」
 空が暗かった。
 太陽が雲間から覗く事が多くなっていたのだが、真冬に戻ったかのように今朝は寒く、重そうな光の 雲が空を覆っていた。
「そうだな」
 同じように空を見上げていた一郎が応えた。
 山から吹き下ろしてくる風が、全身を背後から打つ。

「光希」
 寒さを全く感じないかのような元気な声で、一郎が呼んだ。
「俺、良い事思い付いたんだ」
 私は破顔した。過去一緒に遊んだ時に、何度か同じ台詞を聞いた事があった。大抵、碌(ろく)なものではなかった。
「何だ?」
「その前に、お前のご両親の位牌は?手ぐらい合わせたいんだが」
「また唐突に言い出すな」
 まともな事をと、内心で言う。
「姥様が世話をしてくれている筈だ」
「あ?それでいい訳?お前は」
「と、言われても、だな。仏教色の薄い村内だから気にした事がなかった。作法も知らないしな。墓は隣村にあると聞いているが、墓参りもした事がないから、詳しい場所も分らない」
 一郎はあからさまに、がっくりと肩を落とした。
 私は折角の気持に申し訳なくなった。
 がばっと一郎は顔を上げた。

「お前の保険証って、何処にあるんだ?」
「何?」
「それもないって言うんじゃねぇだろうな」
「否。姥様と一緒になっているので、姥様が持っているが?」
「何処だ?」
「何故だ」
「なぞなぞやってんじゃねぇんだから、スパッ、と応えろよ」
 私は溜息をついた。

「姥様の自室だろう。仕舞われている場所は、知らないが」
「婆ぁの部屋か」
 内心、冷や汗をかいた。
「何に使うのだ。別に何処も悪くはない」
 まぁまぁ、と言って一郎は、スコップ二本を担ぎ、参道を早足に上がり始めた。
 まさか、本気で?
 部屋に入る気だろうか、と慌てて後を追った。
「何を考えているのだ」
一郎が足を止めたので、私も止めた。
「これは確認だ」
 ぐるり、と体ごと一郎は、私に向き直った。

「お前、ご両親の事や自分の事を知りたい、と未だ思ってるか?」
「勿論だ。いつ迄も立ち止まってはいられない」
 決意を込めて言った。

「良し。だから、さ」
 一郎は、スコップを横に担ぎ、案山子のように、柄に両腕を掛けた。そして少し声の調子を落として言った。
「お前は随分、神主を頼りにしているし、そうなったのも分るが、あいつは、神社の不利になるような事は言わねぇだろ」
「うん」
「村の奴等と同じように、お前の疑問には応えないと思うんだ」
「私もそう思う」
 一郎が案山子の格好のままで、まじまじと覗き込んできた。
「別にお前の不遜な態度に腹を立てたりはしない」
「お前、あいつを頼りにしてないのか?」
 自分でも気付かなかった変化に、はっとした。


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