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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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湯浅 2

 鉄筋建物の裏から出た途端、強い風に吹かれ、押し返されそうになった。
 村の中を通る道へと足を踏み入れる。
 車両進入禁止と言うわりには、十分車が通れる道幅だ。除雪車の轍の跡がある。

 もう、三月の半ばだと言うのに、この雪の量。やっぱり、雪国だなぁ……。
 湯浅は、仕事を忘れ、呑気にも感慨に耽った。
 二メートルはあろうか。道の両脇には雪の壁が続いている。
 あ。小型カメラだけでも提げてくるんだった。
 雪に包まれた村はさぞ絵になるだろう。道の半分迄来てしまっている。ここから戻るのも億劫に思えた。
 上手く取材を続けられれば問題ないが……。あいつに見せたいしなぁ。否、興味ないかもなぁ。否否。
 湯浅はすっかり自分の世界に入り込んだ。

 鳥居に辿り着くと、地吹雪もなくなり、視界も良くなった。
 坂になっている参道は、雪が均一に丁寧に退けられており、信心の深さが窺えた。
 変わらないな、と湯浅は、ここでも感慨に耽った。
 おや。人が居る。
 参道の中程に二つの人影があった。神社の者かと、緊張を取り戻した。
 人影は立ち話でもしているのか、動く様子がないので、坂を上り始めた。

 寒さに強いのだろうか。徐々に見えてきた二人は、驚く程薄着だった。
 白いズボンと白いトレーナー、薄手のジャンパー。一般では見掛けない白を基調とした服装をしている事からして、まさしく神社関係の人間だろう。雪に紛れて見える程、体の線が細く、肌が白い。凛とした雰囲気で、例えるなら早春に咲く雪割り草だ。
 もう一人は、何処でも見掛けるジーパンと紺のトレーナー。この寒さの中、上着は着ていないのは、異常だが。健康的な体付きで、はつらつとした雰囲気だ。恐らく街の人混みの中に紛れても目立つだろう。
 対照的な組み合わせに興味が湧く。
 神職見習いと信者、友人かな。
 せいぜい十代の半ば、高校生ぐらいにしか見えなかった。登校の時間はとうに過ぎている時間なので、学校はどうしたのだろう、といった疑問を浮かべた。
 取材に関係の無い事まで頭を回している余裕はないか。
 軽く挨拶して通り過ぎるべきだと、湯浅は足を進めた。

 白い服の少年が、トレーナーの少年の顔を触りだした。凹凸を確かめるように手を動かしている。

 もしかして……、あの子は……。

 暫くして振り向いてきた少年の顔を見て、湯浅は衝撃を受けた。

 光希、か!

 不思議そうな様子を少年が見せたので、会釈した。警戒心を持たれないようにと思っていたのだが、返って意識し過ぎてしまい、ぎこちない挨拶になってしまった。

 こんなに早く会えるとは……。


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