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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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山根 1

 私は知らされていなかったのだが、男性が言った通り、取材の事は予約済みだったようで、社務所に着くと姥様の息子の一人である山根が待っていた。識峰のすぐ上の兄で、会計一切と神社と外との遣り取りを任されている人物だ。通用口横にある応接間へと湯浅は通されていった。

 別れ際、通常の雑事に戻るよう山根に言われた一郎は既に居なく、通用口で待つよう言われた私は、酷く落ち着かなかった。
 社務所内の空気がどことなく騒然としている。
 こんなに朝早くから……?
 滅多にない事で、事態を確かめたかったが、誰の姿もなかった。
 湯浅との対応が終わったのか、待たせたのか、思ったより早く山根が戻ってきた。
「用意しなさい」
「はい」
 それだけで、通じた。

 神事の用意をしに、着替えの間へと入った。
 既に喜右ヱ門が居て、用意を整えてくれていた。
 私が着替えている間、手伝う事無く、いつものように少し離れた場所で正座している。
 空気が重く感じられる。

「着替え終わったか」
 頃合いを図っていたのか、山根が部屋に入ってきた。
 私と喜右ヱ門は平伏した。
 山根は、喜右ヱ門に顔を向けた後、私の前に正座した。
「光希君。君の奉仕は、今から夜になる」
「えっ」
 つい先程、用意しろ、と言ったのは山根本人である。
 驚いていると、喜右ヱ門も初耳だったのか、顔を上げた。
「姥様の指示である。家に戻り、寝ておきなさい」
「そう……ですか。分りました。今夜から、ですね」
「喜右ヱ門。君は、このまま昼間の奉仕を続けなさい」
「えっ。……なっ」
 喜右ヱ門が狼狽えた声を上げた。
 私が夜の役に変わると同時に、喜右ヱ門も移っていたので、私も少なからず動揺した。
「なしてっ?我が何か失態を仕出かしたんですかのっ」
「これから光希君の奉仕の時には、私が付く」
 一方的に山根は言い、裾を打って立ち上がった。
「承服出来ませんのっ」
 追いすがる喜右ヱ門に構わず山根は部屋を出て行った。
 喜右ヱ門は私を振り返り、訳サ訊いてくるでのと言い残して山根を追っていった。

 本格的に始まったか。
 神霊は夜に訪なう事が多く、訪ないが多くなると、全てが神事中心に回っている社務所内は昼夜逆転する。
 それだけならいいが……。
 朝から始まっている異常と合わせ、喜右ヱ門の移動。姥様は何かを感じた上で指示を出したのだろう。
 山根は喜右ヱ門とは違い、神泊処に踏み込む事は、決してしない。
 今期は例年の神泊りとは違う。その不安が当っていたら?

 無償に一郎に会いたくなった。


 | 目次 | 

別窓 | 第6章 雪催い→3 山根 | コメント:0 | トラックバック:0
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