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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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痣(あざ) 1

「部屋を出よう」
 一郎に腕を引っ張られ、私は書庫から出た。
 覗き見る体勢のまま、桃花は未だ笑っている。

 刺激したくはないが、戸に寄り掛かられていては、閉められない。
 桃花の肩口に、顔を寄せ、優しく言った。
「そこを退いて貰えるかな?戸を」
 さっ、と桃花が腕を、廊下の方へ上げた。
「姥様」
 ぎくっ、として私が廊下の方に顔を向けるのと、一郎が東の窓を開けるのは、同時だった。

「舌噛むなよ」
 一郎は私を片肩に担ぎ上げた。ズボンの前ポケットから何かを掴み出し、窓の外に向って投げた。
 自分の足で逃げた方が早い。抵抗する間もなく全身が強い風と落下感に襲われた。強く抱え込まれ、激しい衝撃があると共に息が詰った。大きく息を吸い込んだ時にはもう、一郎は私を抱えたまま、 書庫の真下に当たる薪置き場に身を移していた。
 ま、まさか……、窓から飛び降りた?
 ドサドサドサッ
 さほど離れていない場所から、雪の落ちる音が聞こえてくる。
 降りる直前に一郎が外に向かって何かを投げたのは、雪の積もった枝を狙ったに違いない。一本の枝の雪が落ちれば、他の枝もゆさぶられて次々と落ちる。着地音は誤魔化せるかも知れないが。
「こりゃ。……こりゃっ。止めれっ」
 桃花の笑い声、本の落ちる物音、姥様の叱る声が上から聞こえる。
 ……桃花様が私達を庇ったのか?まさか。否、でも、……もしや……。
 姥様が来る事を教えてくれたのは桃花だ。思っていたよりもずっと状況を把握する力があるのだろうか。
「ここにへってならねど、何度言ったら分るっ。分らね子だなっ」
 バンッ
 窓が閉められ、内の障子も激しく閉められる音がした。続く叱咤の声と、駆け回る桃花の軽い足音。 それを追う、もっと微かな姥様の足音。
 何故、桃花様が……?
 部屋を去る桃花の足音がした。書庫に入ってくる姥様の足音がして、書物を片し始める音が続いて聞こえてきた。やがてそれも消え、私は安堵の息を吐いた。
 桃花様の気紛れだろうが、何であろうが、助かった。
 未だ担がれているのに気付き、足をばたつかせて降りる意思を示すと、足からゆっくりと下ろされた。早々、社務所に向おうとすると、つん、と裾が引っ張られた。振り返ると、一郎が足元に蹲んでおり、左裾を摘んでいた。
 薪置き場には戸がなく、出入口近くは雪が入り込んでいる。
 何か踏んだか、と足袋を踏みしめると、裾を大きく持ち上げられた。足の付け根辺りまで冷たい外気に晒され、一郎の手を退かそうとすると、今度は手首を掴まれた。
 ……怒り……?
「俺一人で行こうかと思ったが……。止めた」
 手首を握り締める手が段々と、締め付けるように、力が強くなってゆく。


 | 目次 | 




二階から飛び降り……。
無謀。まさかこの記事を読まれた方でする人は居ないとは思いますが、真似しないでくださいね。
クッションになる程積もる地域はツララが相当デカイです。軒下には落ちて割れて尚デカイ氷の塊が。ザックリボックリなんてことになるかもネ?
一郎に死しんだり怪我されたりされると物語が止まる作者理由で無事に済ませているだけデス。


別窓 | 第6章 雪催い→5 痣(あざ) | コメント:0 | トラックバック:0
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