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タダ読みたくて

自作小説「神泊村」を連載しているブログです

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痣(あざ) 3

「何か足についているのか?」
 冬季の行動が一郎の時と同じだった。
「……手の跡が……」
 痣になってついている、とその形に合わせるようにか、私の足首を軽く掴んできた。
 素早く抱え込む様に袴の中に隠した。
 お陰でいつ掴まれたのか、思い出した。一郎ではない。昨夜だ。痣が残る程に強く掴まれた実感はなかったが、それ程強く握られていた、という事が恐怖を抱かせた。

 黙り込んだ私を見て、冬季は溜息をついた。
「もしかして……、光希は自分が見えないのか?」
「え。見える。が、他人の光の様子程、自分の光は、良く見えない……」
「痛みはないのか?」
「酷いのか?」
 裾を持ち上げて訊くと、冬季は、ふい、と顔を背けた。
 そ、……そんなに酷いのかっ?

「光希……」
「うん」
「どんな時に欲情する」
「……。は?」
 いきなり話題が変わっただけでなく、思ってもいなかった質問に、ただ驚いた。
「見て、ではないだろう」
 納得した口調で、冬季は言った。
「触るよりも先に、目で見て欲情するものだが、光希は違うようだな」
 このような話題をする事がなかったので、私の顔が熱くなってゆく。
「う……ん。……触る感触があって、からだが」
 冬季は額に手を当てて黙り込んだ。
 別に、己の性に対する常識が人とかけ離れているとは、思わなかった。

 大体私にとっては、見える人物の姿が発光体で、肉体的な実感は皆無であり、触ってから初めて実感を得ている。今迄に触れた覚えのある人物は、男性と子供だけで、日常意識する事はなく、恥ずかしい事だが、専ら己の手の感触だけが頼りで、女性の体がどのように違うのかも知らない。村の女性を含む全員が私に触れる程近寄らないし、信者の女性と軽く握手した事はあっても触れたと思う程触れた事もない。
 強いてあると言えるのは、桃花だ。気紛れに重ねてくる唇は、確かに心地良くもあったが、子供に対して可愛く思う気持ちが勝り、女性以前の存在だ。無償に守ってやりたい気持ちすらあるので、そういった対象にはならなかった。
 こうして考えてみると、性に対する知識が乏しいように思える。

「とにかく、今後、気を付けてくれ」
 うん、と頷いたものの、何に気を付けるのか分らない自分に気付いた。
「余り肌を見せるな、と言っている」
 冬季は、私が理解出来ずにいるのを明らかに見抜いて言った。
「す、少しもいけないのか?日常生活が出来ないだろう?」
 冬季は軽く息を吐くと、再び黙った。おもむろに、板の間に腰かけている私の脇に片手をついた。その覆い被さってくる圧迫感に、慌てて再度、分った、と返事した。
「良かった……」
 冬季は体を起こし、安心した声で言った。
 己の鈍感さに気付いた。彼は、身を持って私にも分るように教えてくれようとしたのだろう。何気ない動作でも時として誘っていると取られかねない事を。視覚的な事を考えてくれと、言いたいに違いない。今迄、私に対して、そう言った事を気を付けろ、と教えてくれた人は居なく、有難く思うべきかもしれない。そう思考に耽っていると、冬季の顔が脇におりており、囁かれた。
「私を好きになった時には、容赦なく服を脱がすがな」
「ふっ、ふゆ、とし」
「何、気障ったらしい事言ってやがんだ。このムッツリが」
 割り込んできたのは一郎の声だった。冬季が背にしている裏口に立っていた。
「立ち聞きしているような奴に言われたくないな」
知っていたのか、驚きもせずに冬季は返した。
 してないしてたと、仲が良いのか悪いのか、子供の様なやり取りを二人は始めた。
私は気が抜け、靴を雪の中に隠した事を思い出し、着替えに行く事を二人に言って、靴を持ってその場を後にした。


 | 目次 | 



そろそろ光希に「無防備な子」させておくのも限界なので……ね。
カットしようか迷った……。


別窓 | 第6章 雪催い→5 痣(あざ) | コメント:0 | トラックバック:0
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